[海外] イラク/血とカネにまみれた米・民間軍事会社
イラクに見る戦争のネオ・リベラル化
タイム電子版によると、九月一六日、米民間軍事会社(PMF)・ブラックウオーター社の警備員がイラク民間人へ発砲し、一七人を殺害した。
イラク政府は同社の国外退去を決定したが、米政府は拒否。やむなくイラク政府は、「グリーンライン内の操業のみを認める」とした。さらに「他のPMFの活動実態も調査する」と、イラクのマリキ首相は言明している。ライス国務長官(彼女の国務省役人の警護はブラックウオーター社)は、イラク首相に電話し、「米国として事件の真相を調査する」と言った。FBIの調査では、少なくとも一四人の殺害には正当な理由がないことが判明した。
軍人なら軍法会議で裁けるが、民間警備員の場合、これを裁く法律はないので、彼らの犯罪は野放しだ。
しかし、イラク政府のブラックウオーター社や他のPMFの営業活動制限は、米を窮地に追い込んでいる。外交官や米政府要人の警護をPMFへアウトソーシングしているからである。
元CIAの中東担当の将校で、現在タイム電子版の情報関係コラムニストであるロバート・ベアーは、「ブッシュ大統領は、PMFを追い出してその仕事を本来の担い手である軍に戻した方がよい」と勧告している。
イラク戦争は史上稀に見る「民営化」戦争といわれる。今人民新聞で日本語版作成中のDVD『イラク・フォー・セール』によると、戦費の、実に四〇%がPMFに流れ込んでいる。民間会社は「イラク復興」や「民主主義作り」のためにイラクにいるのでなく、利潤目的のためにイラクにいるのである。
ラムズフェルド元国防長官が軍のダウンサイズを強行し、多くの仕事をPMFにアウトソーシングした。その経営陣には元軍人や政府高官がいて、政府から利潤の大きい請負契約を得ている。
例えば兵站部門のPMFハリバートン社の前CEOはチェイニー副大統領で、同社の過剰請求や浪費が大問題となっているのに、政府の妨害で公聴会も開かれない状態である。またCACIというPMFの警備員は、世界的問題となったアブ・グレイブ刑務所における虐待と拷問の主犯であった。あの事件に加担した米兵は軍法会議で一応裁かれたが、CACIの警備員は野放しのままであった。