[海外] アルゼンチン/社会問題可視化させるオルタナティブメディア
──藤井枝里
アルゼンチンの息吹
早くも一〇ヵ月の留学生活が終わりに近づき、アルゼンチンから送るレポートも今回が最後となりました。
そこで、今まで見てきた社会運動―労働者による会社の自主管理・ピケテーロス・女性運動・農民運動など―を振り返ってみると、それらを結び付ける、ある不可欠な要素に気づかされます。
それは、オルタナティブメディアの存在です。各運動体が、それぞれ別の領域で各自の問題に立ち向かっていながらも、広範なネットワークによって他領域との強力な連帯関係を築いている。これは近年のラテンアメリカの社会運動において鍵となる潮流であり、それだけにメディアの果たす役割には注目すべきものがあります。
そこで私は、いわゆるオルタナティブメディアと呼ばれるものに携わる人々のもとへ向かいました。国内で唯一ジェンダー問題を専門に扱う月刊誌、ネットメディア、コミュニティーラジオ…こうした様々な立場の人々の話を聞いてわかったのは、目指すものは同じであり、手段は千差万別だということでした。
世に溢れるポルノ雑誌に表されるような商品としての女性ではなく、成長する女性、生産する女性、発展する女性を社会的視点から取り上げる月刊誌『ウルバーナス』。コルドバの通信員として働く大学生のファクンドはこう言います。「例えば僕たちが取り上げるような情報がなければ、誰も知らないままその問題は埋もれてしまう。マスメディアが無視してしまう女性の権利を取り上げる僕らのようなメディアは、人々が社会的意識をもつための媒体となる。それは、世界のほんの小さなひとかけらを、少しでも変えたいという意識だ」。
一方、CISPRENというコルドバのマスコミ労組が目下取り組んでいるのは、国内最大の「クラリン」(日刊紙)グループに属するラ・ボス社が行った、賃上げを求める集会への弾圧に対する抗議活動です。