[海外] フランスで年金制度改悪、若者暴動へ
NO=VOX(声なき者)アニー・プールさんに聞く
「サルコジ大統領に絶望した若者たちが、銃を持って反乱を始めた」こんなショッキングな実態を語ってくれたのは、一一月三〇日に来日したアニープールさん。NO=VOX(声なき者)メンバーで、ATTACフランスの運営委員も務める。一四才から社会運動に参加し、現在は、パリ郊外で貧困者の居住権獲得のための運動を担っている。
一一月に入って仏は、三〇万人が参加したゼネストや若者暴動など、政権への批判が高まっている。サルコジ政権下の仏社会運動について聞いた。(編集部)
治安部隊として軍隊が出動
今回の若者暴動は、以前のものとは明らかに違います。組織的で先鋭化しています。五月に行われた大統領選挙で郊外の貧困地域では、多くの若者がサルコジ氏に投票しました。サルコジ氏は、選挙期間中、既得権益の枠組みを痛烈に批判し、一方でフランス人としての誇りやアイデンティティを喚起する選挙戦術をとりました。貧困と差別の中に捨て置かれていた若者たちは、ある種のカタルシスを感じ、変化を求めてサルコジ氏に希望を託したのです。郊外の貧困な若者たちの投票率はかつてなく高いものでした。
しかしサルコジ氏は新自由主義派ですから、彼らの生活を改善するような具体的な社会政策はもち合わせていません。このためサルコジ氏に対する支持は、たちまち失われました。さらに彼は、彼らへの暴力的弾圧を強めたのです。警察官に加えて軍隊を出動させ、治安弾圧の前面に軍が登場したのです。
弾圧強化は、郊外だけではなく全国的です。パリ市内の銀行通りで、ホームレス家族が占拠した空きビルから強制排除され、四〇日間にわたって再入居を求めて道路を占拠して闘いました。彼らを包囲し排除したのも軍隊でした。
サルコジ大統領への期待が絶望へと変わり、弾圧が強化される中、一一月の若者暴動は、車をひっくり返して火をつけるという程度の暴動から、銃火器による対抗暴力へと変化しています。暴動というよりも蜂起に近い状態です。
ピストルなどの銃火器は、ギャングなど犯罪者集団が提供しているようです。これまでの若者暴動は、ギャングとは明確に一線を画していましたが、サルコジ後、ギャングが暴動を繰り返してきた若者と結びつき、警察・軍隊への組織的対抗暴力へと変化したようです。