更新日:2007/11/16(金)
[社会] 介護スタッフの人間性を奪う現場
──遥矢当
介護スタッフとの衝突
「ごめんなさい…。この汗は精神的なものだと思います」彼女は初秋だというのに、この夏の猛暑を思い起こさせるような汗を顔中に滴らせた。
秋になって、私は久しぶりに定職を得た。東京都中央区にある高齢者複合施設での統括業務である。
汗を流す彼女は私の前任者であり、九月末で退職する。退職理由を尋ねると「二人目の孫が生まれるから」と話すのは、表向きの理由に過ぎなかった。実はこの一年間、彼女は職場内のいじめに苦しんいた。彼女の元でこれまで働いていた介護スタッフも、いじめに嫌気がさしており、驚く程の離職率でスタッフの入れ替わりが続いた。私は、施設全体がそんな最悪の状況の中に飛び込んだ。
彼女は昨秋、オープン間もない施設が早々に経営難に陥ったため、本社の肝いりで都内の在宅介護事業所から異動を命じられて赴任した。在宅介護で培ってきた彼女の情熱は、精神的にも未熟で、社会性に乏しい若い介護スタッフと、利己的になりがちな気軽なパート感覚の主婦スタッフによって打ち砕かれてしまったようだ。イジメの端緒は、介護現場を仕切っていた若い看護師と生活相談員二人との折り合いが悪かったことだ。相談できる相手もいなかった。施設長も労働組合(注)も、「もう少し様子を見たい」と放置し、事態は悪化するばかりだった。
続きは本紙 【月3回発行】 にて。購読方法はこちらです。