[社会] 松下電池工業、中国でカドミウム汚染
9/10 本社に申し入れ行動
「申入書は受け取らないし、面会もお断りします」。松下電池工業(本社・守口市)は、「無錫松下電池有限公司」(中国・江蘇省)でおきたカドミウム汚染について、事実関係の明確化と日本本社の責任の明確化を求めた労働組合・市民団体に、こう応じた。
一〇日午後の本社への申し入れ行動に対しても、多数のガードマンを配置した上で警察を導入するなど威圧的態度に終始した。日本を代表するグローバル企業が社会的責任に対してこれほどまでに無頓着な姿に驚かざるを得ない。
APWSL(アジア太平洋労働者連帯会議)・ゼネラルユニオンなど二八団体、一二名は、一〇日、松下電池本社に対し、@カドミウム被害実態の開示、A労働者の要求と会社側の対応の明確化、更にB日本本社の責任の明確化を求め、申し入れ行動を行った。
しかしこの日、本社門前には数十人のガードマンが配置され、私服警官らしき怪しい人物も多数。ビデオカメラも数台回すという物々しい警備体制がしかれていた。
入場門守衛室で来訪を告げ、総務部への取り次ぎを要請したが、直ぐさま「お引き取り下さい」との対応。総務部より「帰らすように」との指令が届いていたようだ。松下電池の無責任な対応に労組員らの申し入れ行動は抗議活動に移行していた。
市民団体らは、事前に面会を求めて連絡をしていたが、松下電器は、「責任ある部署の決定として一切お会いできません」と伝えてきていた。抗議行動開始から三〇分後には、制服警官四名が登場。逮捕もちらつかせて市民団体を威嚇した。
「致命電池」(殺人電池会社)と書かれたプラカードを掲げ市民団体らは、一時間ほど門前で抗議活動を行った後、京阪守口駅に移動し、ビラまきをして解散した。
「松下電池の無責任な対応に怒りを感じる」。APWSL運営委員の稲垣豊さんは抗議行動を終えてこう語った。「警察まで導入して威圧するとは言語道断。松下側は、事実関係についても説明しないので、事実そのものが闇の中。今回のカドミウム汚染は、松下電池だけの問題ではなく、海外進出する日系企業全体の問題であり、グローバリゼーションの問題だ」としたうえで、国境を越えた連帯活動の重要性を指摘した。
松下電池カドミウム被害とは?
今年1月、中国・無錫市の松下電池の工場で、労働者が健康診断の公表を求めて1週間にわたって自然発生的サボタージュがおこった。中国・中央テレビなどで深刻なカドミウム被害が報道され、心配になった労働者が健康診断の結果を知らせるよう要求した。松下は「全員問題なし」との定期診断結果を発表していたが、実際には尿中カドミウム検査で警戒ラインを超えている労働者が20人を超えていたのである。
松下と労働者は、再度健康診断を行い、労働安全衛生と防護用具を改善するということで解消に向かうかにみえた。しかし、無錫松下電池の人事部副部長・潘為さんが、退職後に自分のブログで、当時の経緯を詳細に記述した文章を発表。あらためて松下側の不適切な対応に批判の声が上がっている。
松下はストライキ後、ラインに2台の集塵機を増配し、労働防護用品も交換した。しかし無錫市疾病予防センターは松下電池工場の環境検査で「一部のラインの作業ポイントの大気中に含まれるカドミウム含有量が国家基準を超えていた」ことを明らかにしている。