[政治] 米軍再編/補助金カットに岩国市民が抗議・募金活動
新庁舎建設資金をストップ
「強引に(基地)移転を進める国のやり方に抗議したい」。米空母艦載機の岩国移転を迫る国が、市役所新庁舎建設のための補助金カットを通告したことに抗議して、建設資金の募金活動が岩国市で始まった。
「岩国市新庁舎募金の会 風」代表の岡田久男さん(七二才)は、「政府のやり方を考えると、はらわたが煮えくり返る。表面は募金活動だが、中身は抗議行動です」と語る。
新市庁舎は来年三月に完成予定だが、総事業費八一億円のうち、四九億円が国からの補助金で賄われることになっていた。すでに〇五・〇六年度分(一四億円)は交付されたが、〇六年一二月、政府は、岩国市の反対姿勢を理由に最終年度分(三五億円)を突然カットした。反対自治体への見せしめ「懲罰」だ。
そもそも新庁舎建設補助金は、一九九六年の日米合意に基づき、沖縄・普天間飛行場の空中給油機移転を受け入れる見返りとして計上されたもので、空母艦載機移転とは関係のない補助金。井原市長は、「突然補助金がカットされるとは、信じられないこと。国自ら約束を反古にし、信頼関係を崩すもので、到底納得できない」としている。
しかし、この効果はたちまち現れた。「補助金がカットされたのは市長の責任である」として、市長問責決議案が一六対一五で可決された(〇六年一二月)のに続き、〇七年度一般会計予算=約六六〇億円が三月市議会において否決されたのである。
艦載機受け入れの賛否を問う住民投票(〇六年三月)で受け入れ反対が圧倒的多数を占めたのを受けて、市議会内賛成派・反対派は拮抗していた。しかし反対派だった公明党が、「民意が変化している」と態度を変えつつある。
三月議会では、事実上移転容認となる「在日米軍再編に係る決議」「国防協力都市宣言を求める決議」が賛成多数で可決されており、容認派による市長攻撃が激化している。
「約束は守ってもらわんとね」
「子や孫に平穏で誇りある岩国を遺してやりたい」―「みんなで支える新庁舎 庁舎募金の会」代表の河本かおるさん(五五才)は募金開始の動機をこう語る。河本さんの自宅は、岩国・飛行場離陸コースの下方にある。防音工事が施されていても、爆音被害が「当たり前」になっていたという。
NLP(夜間離着陸訓練)反対署名では、先頭に立ち六万筆を集め、防衛施設庁(当時)に提出もした。ところが署名提出直後に艦載機空母移転が発表されたのである。
一〇〇名ほどの地元主婦で発足した「庁舎募金の会」は、現在会員数三五〇名。毎月一回街頭で「これ以上の騒音を子どもに残すわけにはいかない」と訴える。子どもたちからの募金もあり、毎回三万円ほどの街頭募金が集まる。「知ってもらいたい」とフリーマーケットも開いた。
「約束は守ってもらわんとね」という基地周辺住民の声が多いという。先に述べたとおり新庁舎建設補助金は、空中給油機移転の見返り。約束が反故にされたのでは、政府を今後信用できなくなる。
尾津の仙鳥館自治会は、六〇万円をカンパした。尾津も基地間近地域。会長の橋本さんは、「国の一方的なやり方には絶対に負けないぞ!という心意気を先頭に立って示したかった」と語る。
「集まった募金で木の一本でも植えられたら、いい」河本さんたちは、庁舎が完成するまで募金を続ける。
井原市長も街頭に立つ。「圧力に屈せず、できる限り自前財源を確保するために、市民の募金活動を積極的に応援する」と訴える。
「テレビで市庁舎募金の活動をされている井原市長を見て、女房が協力をしようと言い出しました。年金生活者に対し、年金を減額するいじめ政策をとる政府に腹立たしく思っているのと通じるからだと感じました」。こうした市民の思いがつながり、募金は六月末で総額六三五万円余となっている。