[社会] 野宿者とスポット派遣・ネットカフェ難民
切っても切れないフリーターと若年野宿者
最近、ふと気がついた。
二〇〇二年春、私は長居公園のテント村に引っ越した。それ以来、一五〇人ほどの野宿労働者の相談を受けてきたが、そのうち二〇人ほどは一〇代から三〇代の若者だった。彼らは、テント村で野宿の仲間の仕事にふれ、アルミ缶や銅線集めなどの仕事を覚えていった。
ちょうどその頃、いわゆる「日雇い派遣」が私たちの周りでも広まり始めていた。当時は事務職などの常勤派遣と区別するために、「登録」とか「登録派遣」と呼んでいた。
思い出したのは、私が若者らに「登録派遣で働いてこい」と叱咤していたということだ。ハローワークや通常のアルバイト面接で仕事を探すよりも、履歴書も必要なく、ごく簡単な面接だけで登録できる「登録派遣」は、野宿の若者にとって非常に働きやすい現場だった。
私は当時、公園に手配にやってきた業者の紹介で、五〇代の野宿の仲間と一緒に建築現場などで働いていたが、線の細い若者は土方の仕事を敬遠していた。「派遣」で回される現場は、土方よりも比較的労働強度が低い。
何人かのテント村の若者が日雇い派遣に登録した。コンビニでバイト情報誌を立ち読みし、連絡先だけ控えて電話を入れた。金のある時は、これも当時増殖していた二四時間営業のインターネットカフェや漫画喫茶で寝泊まりし、仕事のない日はテント村に戻ってきた。
私自身も日雇い派遣のA社に登録し、半年ほどそこで働いた。いまグッドウィルなどで問題になっている「データ装備費」に当たるものを徴収されたし、交通費もろくに払われなかったし、待機時間の賃金も不払いだった。だが当時私は「まあ、そんなもんか」と土方よりも気楽な日雇い派遣の中で、たいして疑問も持たなかった。そのうち、不安定な生活に耐えきれず、職種を変えた。「グッドウィルやフルキャストなどが、派遣法で禁止されている建築現場に労働者を派遣している」という話を聞いたのは、その後だった。