[海外] パレスチナ/平和を商売にするNGO
ラマラ在住政治アナリスト・元NGO活動家 アクラム・ベイカー
イスラエルの占領を問わずに和平は語れない
先日、妹のハムスターがまたたくさんの子を産んだ。やっと生活が普通に戻ったと思えた頃に、ハムスターの子が産まれ、篭の中で輪車が終わりなき回転を始めた。このハムスターの子の群れを見ていると、つい、雨後の竹の子のようにあちこちに群生する、西側世界の資金で活動するパレスチナ人(あるいはイスラエル人)の、ありもしない「和平プロセス」に夢中になっているNGOを思ってしまう。
彼らの存在は、西側世界の良心を和らげる意味では役立っているが、彼らの「平和産業」はハムスターの回転車と同じである。
少なくとも一九八〇年代には少数だが、本当にパレスチナ人とイスラエル人の間の対話と和解を促進しようとしていた善意のグループがあった。そして、あの不運なオスロー合意とパレスチナ自治政府誕生以後は、やたらと和平グループが激増した。
一九九〇年代、地中海からヨルダン川までの地で金を手に入れる一番楽で確実な方法は、パレスチナ・イスラエルの対話、宗教的対話、中東またはアラブとの対話、民主主義、非暴力、協力、研究、和平、和解などの名のついたセンターやら研究会やら団体やら委員会を立ち上げることだった。そうすれば豊かな西側から金が転がり込んだ。中身の質はどうでもよかった。
たいていは陳腐な報告書を書き、それを読むのは西洋の首都(または東京)の事務所の豪華な机の前に座った陳腐な資金提供者(ドナー)なのだ。要するにヨーロッパや北米の政府が、神も見捨てたあの中東地域で和平への努力がなされていると、感傷的な言葉で語れることを報告してくれればよいのだ。
確かにパレスチナとイスラエルのどちらにも少数だがまともな仕事をする団体はある。しかし、概して言うと、和平NGOは、友人というよりは「詐欺師」である。
その理由は、資金提供者の歪んだ外交政策からNGO組織自体の問題にいたるまで数多くある。しかし一番根本的な理由は、イスラエルの軍事占領が続く限りイスラエル人とパレスチナ人の間に友好関係を築く基盤がないのに、それに目を閉じて和平やセンチメンタルなヒューマニズムを説いている点だ。(翻訳・脇浜義明)