[コラム] 辺野古沖環境事前調査/沖縄に銃を向けた自衛隊
──津田光太郎
沖縄の辺野古沖(米軍基地・キャンプシュワブの沖合)では、在日米軍・普天間基地の移転先にすることを目的とする環境事前調査が、この五月一八日未明から始まった。しかもあろうことか、那覇防衛施設局は、「調査機材の海底設置作業などを支援する」と言って神奈川県の横須賀基地から海上自衛隊の掃海母艦「ぶんご」(基準排水量五六〇〇トン)を出動させ、反対する多くの住民・市民を威嚇し、民間業者とともに海上自衛隊の潜水士を動員して、ついに調査機器の海底への設置を強行した。
同日、久間防衛相は「短時間に器具の設置を行うために防衛施設庁から依頼があり、海上自衛隊として協力した」「公権力の行使ではなく、あくまで官庁間協力だ」と釈明したが、アメリカに基地を提供するために自国の住民に銃口を向けたとんでもない暴挙であり、断じて許すことはできない。
この間、日本政府は「米軍再編を推進するための在日米軍再編特別措置法」はじめ、どう考えても首を傾げざるを得ない「米軍協力」の手前勝手な「押し売り」施策を進めている。「押し売り」とは、今現実に米軍から何らかの具体的な要求が示されているわけでないからだ。問題の辺野古への「V字形滑走路の建設案」なるものにしても、名護市も含めて住民の多くが賛成していないばかりか、当の米軍自身にしても積極賛成との立場ではない。
日本政府がこの案にこだわるのは、単に政府の体面上の問題に過ぎない。明確なイニシアティヴがないまま、だからこそ、人に銃口を向けながら、その自覚のない軍隊。これはまさに最悪の事態だ。
鳴り物入りの米軍の世界的再編は、いまや何も進んでいない。日米協議は中断されたまま、何も決まらない。
なぜか?いわく、「イージス情報持ち出し事件」などで米軍は日本側の情報管理体制の甘さに懸念を持っている。だから協議が進まないんだ。「イラク戦争は判断の誤りだった」などと発言する自衛隊の高官がいるからだ……。
冗談じゃない。日米協議が進まないのは、当の米軍自身が、その世界再編の具体的方針をいま喪失しているからだ。この喪失がいつまでも続くとは思わないが、少なくとも今、無方針の米軍のために同胞に銃を向けるような愚かなまねは、即刻やめよ!
新しい平和への模索を始めうる、今がチャンスではないか!