人民新聞オンライン

タイトル 人民新聞ロゴ 最新版 1部150円 購読料半年間3,000円 郵便振替口座 00950-4-88555┃購読申込・問合せはこちらまで┃人民新聞社┃TEL (06) 6572-9440 FAX (06) 6572-9441┃Mailto:people@jimmin.com
反貧困社会編集一言政治海外情報投書コラムサイトについてリンク過去記事
更新日:2007/06/18(月)

[コラム] 平野光一/松岡前農相を死に追いやった安部首相

「慙愧に堪えない」農相後任人事

「東のムネオ、西のマツオカ」と揶揄され、農林行政を中心に利権と金にまつわる黒い噂が絶えなかった松岡利勝前農相が自殺した。緑資源機構問題では、業務を受注していた業者が参加する業界団体「特定森林地域協議会」の政治団体「特森懇話会」からの献金の件で検察が動くのではないかとの観測も流されていた矢先の自殺だった。

新党大地代表の鈴木宗男氏は自分のホームページ上で、故松岡利勝前農相が自身の事務所費の問題などについて「今は黙っていた方がいいと国対(自民党国会対策委員会)からの、上からの指示なのです。それに従うしかないんです」と鈴木氏に語っていたことを明らかにしている。

鈴木宗男は以前から松岡氏と懇意で、五月二四日夜にも鈴木氏が「国民に心からのおわびをしたらどうか。国民に土下座し、説明責任が果たされていなかったと率直に謝った方がいい」と進言。これに対し、松岡氏は「自分も謝りたいが、今は黙っているしかない。政府方針も決まっているので、私が何か言うとおかしくなる」と語ったという。

大臣も辞められない、謝罪もできない松岡氏を追い詰めたのは、参院選を控え支持率低下に悩む安部首相にほかならない。「辞任ドミノ」で政権末期状態に追い込まれることを恐れた安倍首相の政治判断が、疑惑のキーマンを自死に追い込んだのである。

死者への批判は控えられがちな日本の風土だが、今回の自殺に関しては巷で同情の声は聞かれない。説明責任の放棄がその原因だが、その矛先は今や安倍首相に向けられ、内閣支持率は、三〇%に急落した(朝日新聞)。

金の話が先行しがちだが、「攻めの農政」と言われた農相としての松岡氏はどうだったか?松岡氏はかつて農林水産物貿易調査会長を務めるなど、農相就任前からドーハ・ラウンドの現場に立ち会い、海外に人脈も構築していた。今年一月、スイスのダボスでWTOドーハ・ラウンド(新多角的貿易交渉)に関する非公式会議が開かれたが、松岡前農相は次の会合を東京で開くことを提案。ドーハ・ラウンドの再開が決定した。

また、高関税が維持される「重要品目」についてWTOのファルコナー農業交渉議長が「一〜五%」を提案するなど、経済のグローバル化の中で日本の農業を新自由主義的に再編する先頭に立っていたのが松岡氏である。岸元首相の孫という血筋と強硬な右派的発言で首相に祭り上げられた安倍に、こうした大転換期を乗り切る見識も方針もなく、族議員の松岡氏に頼るほかなかったのである。

こうした安倍首相の姿勢は後任人事にもあらわれている。後任の赤城氏は日本会議国会議員懇談会に加盟し、首相の靖国参拝を支持する「若手議員の会」メンバー。また、「真の保守主義」を推進するとした「価値観外交を推進する議員の会」に加わるなど「靖国」派である。また、同氏は松岡氏と同じ農水省OBで、自民党農林部会長を務めるなどの農水族でもある。

さらに赤城氏は、農林水産省所管の独立行政法人「緑資源機構」の官製談合事件関連の政治団体から「励ます会」などのパーティー券名目で、二〇〇三〜〇五年の三年間で計二六万円の献金を受け取っている。献金していたのは、同機構の工事を受注する業者らでつくる「特定森林地域協議会」。同懇話会は自殺した松岡前農水相にも献金していた談合組織である。

新しい農相は、公共事業の談合で得た利益(税金)の還流を受けていたことになる。所管大臣として官製談合疑惑の解明にあたる責任があるだけに、赤城氏は、献金の趣旨や受注業者とのかかわりについて追及を受けることになろう。自殺した松岡氏と新任の赤城氏の違いは、赤城氏がより明確な右派イデオロギーをもっているということだけだ。ここまで前任者と似た人物を後任に据える安倍首相には、松岡氏を自死に追いやった反省・後悔など微塵もない。

続きは本紙 【月3回発行】 にて。購読方法はこちらです。
[HOME]>[ コラム ]


人民新聞社 本社 〒552-0023 大阪市港区港晴3-3-18 2F
TEL (06) 6572-9440 FAX (06) 6572-9441 Mailto:people@jimmin.com
Copyright Jimmin Shimbun. All Rights Reserved.