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更新日:2007/06/16(土)

[コラム] 深見史/子供の福祉か「国体」か?

「三〇〇日問題」通達の目指すもの

法務省は、離婚後三〇〇日以内に出産した子を一律に「前夫の子」とみなす民法規定について、離婚後に妊娠したことが医師の証明書で確認できれば、実際の父親の子として出生届を認める通達を全国市区町村戸籍窓口に出した。これは「特例措置」として五月二一日以降の出生届から実施される。医師による「証明書」とは、「妊娠の推定時期とその根拠」などを記したものであり、これを出生届に添付し、「再婚相手の子」もしくは「非嫡出子」としての届け出を行うことになる。戸籍の特記事項欄には「嫡出推定が及ばない」と記載される。

この通達は、いわゆる「三〇〇日問題」(民法第七七二条第一項で「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する」、第二項で「婚姻の成立の日から二〇〇日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三〇〇日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する」と定めているため、離婚後三〇〇日以内に子どもが生まれた場合、再婚相手の子どもとして役所に届けても受理されず無戸籍となる)に対応したものだ。しかし、この「通達」では当初から問題とされている「早産」「離婚成立前の妊娠」には全く対応できない。

長勢法務大臣は、上記通達に先立ち、「貞操義務なり性道徳という問題は、みんな考えなければならない。都合の悪い人が、みんな救われなければならないということになれば、(民法の)根幹が揺るぐことになる。婚姻中の妊娠は今の夫の子とする民法の根幹を揺るがすもので認められない」との、無残な無知をさらけ出す仰天発言を行った。あるいは、無知を装った発言をした。

民法の「嫡出推定」は、子どもの福祉のためにあるのであって、国家の国民管理のためのものではない。「父」の推定は妻の貞操を計るものではなく、子への扶養義務を確定するためのものと解釈されなければならない。

彼の言う守るべき「民法の根幹」とは、子どもの福祉でも男女の真摯な関係でもなく、婚姻届=「性関係の相手の登録」と、それに基づいた性生活の遵守ということだ。登録期間は登録した相手とだけセックスする、というのが彼の「性道徳」だ。

女性にだけ再婚禁止期間を定めた民法七三三条も長らく改正を待たれながら、今回もまた問題を闇に葬られた。その気になれば、たやすく、科学的に「父」を特定できる現在では、この条項はまったく意味を持たないことは明白であるにもかかわらず。

「父」の推定または特定という意味合いからではなく、女性の人権の観点から「再婚禁止期間」は多くの国で廃止されてきた。北欧諸国ではすでに六〇年代後半に廃止され、儒教国韓国でさえ一昨年に廃止した。

これら女性を性・生殖機械としてきた時代の遺物を、「性道徳」「貞操義務」の名の下に後生大事に抱えようとする「彼ら」の意図は明らかだ。

そもそも「三〇〇日問題」とは、出生届不受理による無戸籍状態がもたらす不利益のことである。無戸籍であることが不利益の理由になること自体を問題として、まず取り上げるべきだ。パスポート作成や就学等の行政サービスは、戸籍のあるなしとは関係がない。今に始まったわけではない「三〇〇日問題」が先ごろ急に「注目され」始めたのは、マスコミが仕掛けの「戸籍は大事・人の根幹」キャンペーンと考えるべきだろう。

「戦争が始まるとき家族が強化される」という「戦争の常識」から言えば、国民管理制度としての戸籍・家族が注目され、結果としてそれが強化されるのは、戦争国家化のまったく通常の道行きなのだ。

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