[海外] パレスチナ/ミッションインポッシブルに追い込まれたパレスチナ自治政府
4/13AIC電子ニュースより ニコラ・ナセル
四〇年間の占領と一年間の経済封鎖が、パレスチナの国家的可能性を破壊し続けている。国家による治安保障がなければ、住民の安全は保障されない。パレスチナ自治政府は「インフラを決定的に破壊されながら、法と秩序を施行する」というミッション・インポシブル(実行不可能な使命)を背負わされている。
新しく形成された自治政府民族統一内閣の綱領によれば、「混乱した治安の建て直し」が、経済封鎖の解除に次ぐ重要な政策である。四月八日ガザ市で特別閣議が開かれて、「百日間治安計画」が議論された。これはハニ・アル・カワスメハ内務相が提案したもので、特にイスラエル軍に包囲されたガザ回廊の法と秩序復活を目的としたものであった。しかし具体策は決定されず、議論は次の閣議へと持ち越された。
軍事占領と経済封鎖による自治政府無力化が進行している。二〇〇二年イスラエルの西岸地区再占領、および〇五年イスラエル軍のガザ回廊周囲への再配置以降生じていたパレスチナ保安隊間の権力闘争が激化(故アラファトは保安隊を一〇以上の組織に分断していた)したため、「治安空白」が生まれた。この空白は、〇六年一月評議会選挙でハマスの勝利の後に起きた内紛と、イスラエルと西側諸国の制裁ボイコット政策によって、さらに悪化した。
地域の安定と身の安全を求める住民は、力のあるクラン(族)や宗教関連団体への支配へと組み込まれていった。
一方、経済的不安定はマフィア的不法活動を生み出す条件となった。パレスチナ人権団体を主宰しているイヤド・バルグーチ教授によれば、マフィアやらクラン支配の非公式武装集団が五〇以上横行し、ガザ回廊の主だった地区を支配しているという。
PLO執行部委員で前自治政府文化情報相のヤセル・アベド・ラッボーは、「一体誰が正統な統治者なのか分からない状態だ」と言う。そのうちガザ回廊は危険地帯、つまり、すべてのパレスチナ支援国際組織に退去勧告を宣言しなければならない無法地帯になるのではないか。「そんな宣言が出たら、ガザ住民の苦しみは倍増するだろう」と、パレスチナ人コーディネーターのサエブ・エレカトは言う。最近自治政府の国家安全保障顧問に任命されたムハマッド・ダーランも、「状況は破壊的で、多くの若者は正統な保安隊よりも部族集団や暴力集団の手先になる方を選択している」と語っている。
ハマス選出の法務相アリ・サルタウィも、ダーランの危惧を認め、「族たちの力は強大だ。例えばドグムッシュ一族は強い影響力があり、数も多いので、内務大臣はとても彼らに立ち向かうことができないだろう。真正面から統制しようとすれば、惨めな結果に終わることは目に見えている。」
三月一二日、ガザ市でBBC記者アラン・ジョンストンが誘拐されたことが、ガザの治安の乱れを如実に示すものである。ガザで外国人ジャーナリストがこんなに長く誘拐・拘禁されたことは近年なかった。