[政治] 沖縄辺野古/法的根拠なく軍隊派遣
──土井智義
反基地闘争、新たな局面に
沖縄・辺野古の情勢がにわかに緊迫している。わたしたちはいま、途方もなく危機的な状況に立ち会っているのかもしれない。辺野古沿岸に米軍基地を建設するため、日本政府は自衛隊(海上自衛隊の掃海母艦と潜水部隊)を導入した。これは沖縄だけにとどまらず、戦後の日本社会にとっても大きな転換点となる出来事ではないだろうか。
まずは辺野古の近況を示したい。四月二四日から二六日までの三日間、二〇〇五年九月に前の沖合い埋め立て計画を反対運動が廃案に追い込んで以来、約一年半ぶりに海洋調査が実施され、阻止行動も行なわれた。それから三週間は作業がなかったが、いつ調査が再開されるかも知れない不安のみならず自衛隊導入の報道もあって、運動側はつねに緊張を強いられていた。
五月一七日、辺野古漁港内に事前調査のための作業ヤードを設置するとの情報が入り、一〇〇名ほどの人びとが漁港ゲート前で夜を徹しての座り込みを開始した。沖縄が温暖な気候であるとはいえ、海岸での冷え込みは厳しく、相当にきつい闘いである。翌一八日、ついに海上での作業が再開された。
非暴力行動に暴行で応えた自衛隊
夜も明けきらぬ内から海上保安庁の大型巡視艇四艇をはじめ中小の巡視艇や調査船およそ二〇隻、さらに無数のゴムボートが辺野古の海を埋め尽くしていた。すぐに阻止行動を開始しようとしたが、汀間漁港にとめていた船が海上保安庁による異例の船舶検査にあい、大幅に遅れをとった。海上保安庁の妨害である。
ようやく七時になって阻止行動隊は出港し、徹底した非暴力直接行動によって闘いがすすめられた。運動側は、数隻のボート・漁船以外すべてカヌー隊である。主な行動は、カヌー隊が作業船にしがみついて作業員たちに基地建設の暴力性や事前調査の違法性などを静かに説くこと、また作業側のダイバーを先回りして調査ポイントに潜って座り込むことである。
阻止行動に対してマスコミは「反対派」や「妨害行為」といった物騒なレッテルを貼ろうとするが、この運動は「非暴力で平和をつくる」というモットーによって人びとの「弱さ」を力にして闘っている。また注目すべきは、その三〇名にも満たない参加者の半数近くが退職者を中心とする年配の男女であり、一方の中年・若者の多くは沖縄の内外から集まったフリーターやニートだという点である。沖縄・辺野古という場所において、現代の資本制で周縁化された者たちによる共同の反軍事闘争が生まれつつあると言えるだろう。
このような非暴力の闘いに対し国家権力は、暴力で応えた。中立的立場で安全確保を任務とするはずの海上保安庁は、意図的にカヌーを挟み撃ちにしたり、カヌー隊がしがみついている船に急発進を命じカヌーを転覆させたりと、数々の暴力行為をはたらいた。また作業側のダイバーたちは、調査地点にしがみつく仲間に対して殴る蹴るの暴行を加えた。海中で空気タンクをつかまれたり、ハンマーで手を叩かれた人もいたという。辺野古は、軍隊の無法地帯と化しているのだ。
一八日の阻止行動は午後五時半まで続けられたが、一〇時間以上も海上に出ていたことになる。若者でさえカヌーの操船は楽ではない。年配の方々にはいかに苛酷なものであるか想像できよう。
一方、陸上では、機動隊の強制排除に抗するために、すぐにスクラムを組める体制で座り込みが続けられていた。結局、機動隊は辺野古集落の入り口まで来たが、民衆と対峙することはなかった。