−朝鮮渡航から二十年、帰国を「新たな出発点」に繋げたい−
赤木邦弥
逮捕状発行について
87年に朝鮮に渡航して以来、およそ20年振りの帰国となります。81年秋にドイツへ語学留学した後、87年までウイーンで通訳やガイドの仕事をしながら、ジャーナリストをめざしていた在欧日本人の一人です。朝鮮渡航もジャーナリストしての仕事の一環でした。これまで渡航の理由を公表してこなかったこともあって、「拉致被害者」ではないかと疑われたこともありましたが、今や「拉致一味に合流した男」にされています。180度の転換です。
朝鮮に対するイメージはいまや最悪ですが、80年代は、そう悪くなかったものです。とはいえ、ベールに包まれた未知の国、ちょっと怖いなという印象は確かに当時の私にもありました。一般の人ならおそらく渡航など考えないでしょうが、ジャーナリストなら一度は覗いて見たい、小田実さんの「何でも見てやろう」という本がありますが、そんな気分でした。ところが妻の病気のため旅券更新の出国ができず、91年に旅券が失効。その後、文章活動をメインに、よど号の子供たち(20名)の教育を手伝ってきました。03年から順次に妻と娘二人が帰国、今回、私が帰国することになりました。
今回の帰国に当っては、旅券法に規定された「渡航制限地域への渡航」という旅券法違反容疑がかけられています。旧旅券法(87年当時)によれば、10万円の罰金刑です。この容疑で「逮捕状」というのも極端ですし、しかも今から逮捕覚悟で帰国する私に、わざわざご丁寧にも「国際指名手配」まで出しています。すべてが大袈裟過ぎます。
捜査当局がこのような対応を取るのも、「北朝鮮渡航」という事実以外に「容疑」となる事実が皆無だからでしょうし、「拉致事件」との関連を印象付けて、容疑をできるだけ重いものにしたい、何とか拉致関連でメデイアを動員したい、5月10日の逮捕状には、そういう捜査当局の政治的意図を強く感じています。正直言って驚くと同時に、強い怒りを感じています。