[社会] 大阪市「ホームレス大幅減少」の裏事情
釜ヶ崎医療連絡会議 松尾 美恵子
強制排除と居宅保護
今年一月、「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」に基づく二回目の全国実態調査が実施された。厚生労働省の発表によると、全国のホームレス数は一万八五六四人、二〇〇三年第一回調査時の二万五二九六人を六七三二人下回り、二六・六%の減少となった。なかでも、大阪市は六六〇三人から四〇六九人へ三八・四%の大幅減少。二八・九%減四二一三人の東京都二三区にホームレス数全国トップの座を開け渡すことができた。
大阪市は「景気回復で仕事が増えたのに加え、『自立支援センター』などの施策によって就職・定住する人が増えた」とコメントしたが、果たして事実なのだろうか。
大阪市が情報提供した別の資料によれば、公園・路上の野宿生活物件は著しく減少している。ピーク時には二五九三件(〇〇年八月)あった公園のテント・小屋掛け数は七一二件(〇六年八月)になり、路上の物件数は一五〇九件(九九年一〇月)から四七四件(〇六年一〇月)へと、いずれも三分の一以下に減少した。
大阪市が野宿者排除を強引に推進しているのは確かである。大阪市は昨年一月、大阪城公園と靭公園で、また今年二月には長居公園で、行政代執行による強制撤去を行なった。しかし、法的手続きを踏んでの強制撤去は氷山の一角にすぎず、それを見せしめとして、はるかに広く深く、法的手続き抜きの強圧的な撤去が行なわれている。
公園や路上では、一斉清掃や植栽工事などを口実に、巡回相談員・施設管理職員らが四〜五人もしくは一〇人近くで頻繁に訪問し、テント住民を取り囲んで、「不法占拠だから出て行け」「自立支援センターに入れ」と迫り、半強制的に撤去の承諾書を書かせるという手法がとられている。
昨年五月二日、日本橋公園では、天王寺公園事務所が、本人が中で生活をしているままテントを壊し、生活必需品などを廃棄し、損害賠償を求める裁判が起こされている。承諾書がない場合でも、「同意があった」とみなしたり、放棄物件として壊されてしまうこともある。
昨年六月一日の恵美公園(浪速区)、一〇月二五日の長橋第一公園(西成区)などでは、支援者が駆けつけ撤去寸前に食い止めたが、支援者の目に触れないところで、多くの違法な強制撤去が繰り返されていることは想像に難くない。