[社会] シングルマザーの「命綱」、児童扶養手当縮小へ
はじめに
小泉政権以来、福祉や医療にかかる国庫支出を切り下げる施策が次々と打ち出されている。障害者自立支援法しかり、年金制度改悪しかり。「最低生活水準を保障する」はずの生活保護制度にも改悪の手が伸びている。母子家庭支援制度の改悪もその例外ではない。生活保護を受給している母子家庭に支給されている母子加算はすでに段階的に縮小されており、児童扶養手当も縮小されている。
扶養手当削減から就労支援へ
「崖から落としといて、『今から縄なうからね』と言われているようなものです」と、中野冬美さん(NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ・関西理事)は憤慨する。
二〇〇二年、母子寡婦福祉法および児童扶養手当法が改定され、母子福祉施策が全般にわたって改悪された。それまで児童扶養手当は全部支給が月額四二三七〇円、一部支給が月額二八三五〇円の二段階だったが、法改定により月額四二三七〇円を限度に、支給額が所得に応じて一〇円刻みで逓減する仕組みとなった(二〇〇三年一〇月からは物価スライドが適用され、〇・九%減額となっている)。年収一五〇万円の母親で月々約四〇〇〇円が減額されるなど、母子家庭の半数で手当が減額されることとなった。「(児扶手は)ほんとに命綱だった」――中野さんが言う。減額のために「新聞を取らなくなった母親が続出し、情報からも排除されて貧困に拍車がかかった」。
さらに、〇二年の法改正では、五年間受給した世帯(あるいは受給権発生から七年が経過した世帯)は〇八年四月以降、支給額の半分を超えない範囲で減額されることが決まっており、しんぐるまざぁずふぉーらむ全国連絡会などでは、「不安定就労している母子家庭の母の賃金が五年で上がることは考えられない」「子どもたちに教育費・食費のかかるときには母親の年齢は四〇歳を過ぎ、収入は下がり…児童扶養手当を増やす理由はあっても、減額をしていい理由はない」などとして、厚生労働省に対し、減額は最小限にすることなどを求めている。
児童扶養手当法第二条に「児童扶養手当の支給を受けた母は、自ら進んでその自立を図り、家庭生活の安定と向上に努めなければならない」、また母子及び寡婦福祉法第四条には「母子家庭の母及び寡婦は、自ら進んでその自立を図り、家庭生活及び職業生活の安定と向上に努めなければならない」と記され、「自立・就業支援に主眼を置いた総合的な母子家庭等対策」を推進する(厚生労働省)としているが、中野さんは「就労支援をしてから児扶手を切るならまだわかるが、削減ありきでばっさり切っちゃった」と実態を語る。
政府は支給減額の代わりに就労支援と言うが、実際はシングルマザーの八割は既に働いている。