[社会] 釜ヶ崎住民票職権消除/大阪高裁仮処分無視
消除取り消し求めたKさん投票させず
「ホンマに俺、投票できへんの?ちゃんと確認してや!」──四月八日。大阪市議会・大阪府議会議員選挙の投票日、釜ヶ崎の中にある萩之茶屋投票所で、Kさんが選管職員に詰め寄った。
Kさんは、釜ヶ崎解放会館に住民登録をしている。「市議選で投票できなくなる」として、裁判所に消除取消請求をおこない、三月一日に大阪高裁は「消除差し止め」の仮処分を決定した。
八日の夜七時過ぎ、Kさんは「投票権を取り戻そう!」と、約五〇名の労働者とともに投票所に入り、七時半頃、受付手続きをした。
「僕は解放会館には住んでないんですけど、投票はできるんですよね?」。仮処分決定によりKさんの住民票は消除されていないので、選挙人名簿にも登録されている。Kさんの申告に虚をつかれたのか、うろたえる職員。どこかへ問い合わせをしていたが、やがて戻ってきて「実際に住んでいないのであれば、投票はできません」。
驚いたKさんは、三月一日の高裁決定のことを説明。「大阪市は高裁決定を無視するの?ちゃんと守ってや!」。しかし、選管側は「仮投票ならできる」とはいうものの、まったく受け付けない。
結局Kさんは「裁判所の決定を取りに帰ります!」と、いったん投票所を出たが、戻って来たのが八時を回り、投票は締め切られていた。「大阪市は投票させへんのか!」というKさんの抗議にも、選管側は「こっちが取りに行けと言ったわけじゃない」とはねつけるばかり。大阪市は、大阪高裁の仮処分決定を知った上で、Kさんの参政権を奪ったのだ。
ちぐはぐな対応
さらにKさんは、「実は大阪市は、とんでもないことを言っているんです」と話す。それは、釜ヶ崎労働者の住民票を職権消除しても、被消除者の投票は可能、という大阪市の裁判所への弁明である。
大阪市は弁明書の中で、今回住民票を消除された労働者が、「投票時間終了までにドヤへの宿泊証明等の確認する時間がない場合、住民票の回復などを待たなくても、本人から『ドヤに泊まっている』旨の申し出があれば投票できる」と言っている。つまり、西成区内に居住実態がない人でも、投票日に釜ヶ崎に来てドヤに泊まって投票所に行けば、住民票のあるなしに関わらず、投票が可能だと大阪市は言っているのである。ならば、「居住実態のない住民登録の適正化」とは、果たして何だったのか。
大阪地裁は、そんな大阪市のやり方では、選挙無効の原因になるとハッキリ指摘している。Kさんたちは四月六日に「選挙がやり直しになったら、税金の無駄遣いになる。そうなる前に、直ちに選挙の延期を」との請願をおこなったが、大阪市は適法であると応じなかった。
「裁判所がダメだと言ったケースは強行し、投票させるべきと言ったケースは認めない。こんな大阪市のやり方はメチャクチャです」(Kさん)