[海外] パレスチナ/問題解決にアラブ、国際社会が動き出した
ビルゼイト大学政治学教授 アリ・ジャルバウィ
やっとパレスチナ統一自治政府ができた。ハマスとファタハだけではなく、独立系の人材も入れた広範な連合政府である。
しかし統一政府形成は、外へ向かって打って出るための指導部強化というよりは、差し迫った内部事情に対応するためである。過去一年間、パレスチナは破滅的な内戦になりかねない危機に耐えてきた。
国際社会からの制裁による資金枯渇で職員給料を払えなくなったために生じた公務員ストは、単に学校や病院やその他の公的機関の機能停止を招いただけでなく、ファタハとハマスの政治的・武力的抗争をエスカレートさせた。あちらこちらで衝突が起き、状況はカオス的となり、いよいよ一つの岐路にさしかかったかのように思えた。つまり、ハマスが妥協してイスラエルの条件を呑むか、それとも政権の座を追われるか、である。
しかし、事態はイスラエルやその同盟諸国が望む方向へは進まなかった。占領地には不満と屈辱感が増大していたが、彼らはハマス政府を見限るどころか、ハマス政府に結集し、支えるようになった。
アラブの危機感とハマスの大転換
一方アラブ社会は、イラク、イラン、シリアとレバノン等々の問題がパレスチナ問題と重なり合って、重大な問題に発展する危機感を抱いた。アラブとしてパレスチナ問題に改めて取り組む必要を感じ、介入が始まった。そしてメッカの合意によって、パレスチナ民族統一政府が生まれたのである。
イスラエルはこれを歓迎しない。パレスチナの内部抗争こそイスラエルが望むものである。「交渉相手がいない」という口実で和平交渉をしないですむし、何より入植地拡大、分離壁建設、家屋や農場破壊等々、占領地で好き放題ができるからだ。
イスラエルの最も気に入らない点は、ハマスが一九六七年以前のグリーンラインを国境とするパレスチナ国家樹立(これは国際的コンセンサスとなっている二国並立解決案)に同意したことと、イスラエルとの交渉をアッバス議長に委ねることに同意したことである。
これはハマスの大変化である。しかしイスラエルはその変化を認めようとはしない。イスラエルは、口実として、カルテットがハマスPAに出した条件(イスラエル承認、過去の協定の尊重、テロ放棄)を受け入れない限り、新政府を認めないし、交渉もしない、と宣言した。