[コラム] 死刑執行があった夜、死刑囚房から聞こえた叫び/林眞須美
(「あおぞら通信」創刊号から転載)
死刑執行の予兆
昨年一二月二三日(祝)、昼食に「三笠まんじゅう」と「吉備だんご」の二つが付いてきました。「二つも付いたことないのに」と思いました。
クリスマスイブの二四日の夕食には、マロンケーキが出ました。気分良く過ごしたのですが、急に全身の血液が逆流し始めたような気分になりました。クリスマスケーキが付くのは、いつも二五日の昼食です。だから私は、「明日二五日のクリスマスに、大拘でも死刑執行があるなあ」と直感しました。
私は、カレー事件で起訴され、最後の取り調べを終えての帰り際、小寺哲夫検事から大声でののしられた「最後の言葉」がよみがえってきました。それは、こうです。「よう覚えとけよ。お前がワシに逆らった罰として、一生、都島の大阪拘置所に放り込んでやる。ワシの生きてる限り、毎年死刑執行してやるから、覚悟しとけよ。眞須美、そのたびに震え上がって過ごせ!家族たちは、そのたび、お前以上に震え上がるぞ!」
二五日、七時三〇分に起床してから廊下を気にかけてみましたが、いつもある巡回がありません。「もうこれは、今ごろ確実に…」と感じていました。
夕食後の録音の「お昼のニュース」で四人への執行を耳にし、大変驚きました。
東京拘置所での七七歳と七五歳の高齢の人たちを、よりによってクリスマスの日に執行しなくてもいいのに。執行する職員も、クリスマスの日に「人殺し」をしたということが、一生ついて回るだろうに…。
静寂の中に鳴り響く叫び声
ニュースの後からは、五舎全体が沈没してしまったように、寒々とした異様な静けさに包まれてしまいました。
誰かが窓から外に向けて、「アホの汚職刑務官野郎!アホの中山厚(現・大阪拘置所長)め。よくもクリスマスの日に執行しやがったな。せっかくのクリスマスも台無しや。お前ら、ようもクリスマスの日に人を殺したなぁ。一生ついて回るんじゃ。この人殺し野郎。線香の一本でも上げたんかよぉ」と何度も叫んでいました。
職員もこの日は静まり返っていて、五舎全体が異様な静けさに包まれてました。
階上より男の人のすすり泣いているような声が聞こえてきました。「何でクリスマスの日に、同じ五舎の人を殺さんとあかんのや。天国に行けやぁ。誰かに引き取りに来てもろうたんか。そうか、よかったなぁ。天国に行けやぁ…」
私は、きっと執行された福岡さんと一緒の生活をしている死刑囚の人やろうなぁ、と思い、涙があふれて止まりませんでした。
年末の三〇、三一日は、「フセイン処刑」のニュースばかりがラジオより流され続けました。クリスマスから年末の二〇〇六年の暮れは、もう処刑のことばかりでした。
私自身も、私のいる五舎全体も、今まで以上に感じたことのない寒々とした日々の中、異様な静けさの中でのお正月でした。 (要約)
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