[政治] 不公正な国民投票法案
はじめに
「九条改憲阻止の会」メンバーら約六〇人が二一日、国民投票法案廃案を訴え、国会前でハンストや座り込みの抗議行動を始めた。憲法記念日の五月三日まで続ける。「九条改憲阻止の会」は、六〇年安保の元活動家らが呼びかけ、個人参加が原則だ。事務局の江田さんは、「我々は戦争を知る最後の世代。改憲への動きを座視したのでは孫たちに顔向けできない」と語る。
自民党・安倍政権は、民主党との共同修正案提出を断念し、衆院憲法調査特別委員会に与党修正案を単独で提出したうえ、四月一三日にも衆院本会議で可決、参院に送付する方針を固めている。これまでの委員会審議で民主党と一致した、@投票権年齢は原則一八歳以上とする、A国民投票法の施行期日は公布から三年後とし、その間は、国会での憲法改正案審査を凍結する―などの内容を修正案に盛り込む。
マスコミは、自民党と民主党の駆け引きに焦点を当てた報道に終始しているが、同法案が、改憲派に有利に作られており不公正な投票制度であることを見逃してはならない。(編集部)
テレビCMでマインド・コントロール
ヨーロッパ各国では、国民投票における運動規制はなく、基本的に自由としているが、今回の国民投票法案は、投票の一四日前から運動規制するという。これはこれで問題なのだが、『有料意見広告』は例外として許される。
「有料意見広告」とは主にテレビコマーシャルのことだ。一五秒とか三〇秒とか流されるもので、全国放送で一日五億円くらい掛かるといわれる。改憲派には財界がついているので、多額のお金でガンガン流すだろう。一方改憲反対派にそんな金はない。
テレビ局が「規制すべきでない」と言っているのは、コマーシャル収入のチャンスだからだ。この規定が改憲派に圧倒的に有利に働くのは明白である。
有権者が冷静に判断するために必要な情報は規制してはならない。しかし一〇秒、一五秒のスポット広告を繰り返し流すのは洗脳、マインドコントロールである。
「汚いひなぎく」としていまだに語られる米大統領選でのテレビCM(幼い少女の映像。カウントダウンする男の声。轟音とともに立ち上るキノコ雲。これらで核戦争を連想させた)は、わずか一回の放映にもかかわらず、評判となり、現職大統領に圧倒的勝利をもたらした。
こうしたことからスイスでは、憲法改正に限らず政治的なテレビコマーシャルを禁止している。スペインやフランスも、政見放送のようなものはあるが、一般的なテレビコマーシャル自体を禁じている。テレビコマーシャルは影響力が大きく、また、一瞬の印象で世論を誘導してしまう性質があるからだ。
投票二週間前からは、改憲反対派のビラまきなどは禁止され、イメージ中心の改憲キャンペーンがテレビ画面から垂れ流される・・・。同法案は、こうした不公正な投票制度である。
広告スペースも改憲派が占領
また、「政党による放送・新聞への意見広告のスペースは政党の議席に比例する」との規定が新しく導入されれば、どうなるか?全体を一時間とすると、ほとんどの時間を自民党、民主党、公明党が占め、共産党が一分、社民党にいたっては五〇秒になる。
この点、自民党は妥協しようとはしている。それは「すべての政党に保障される最低限時間」という提案である。この程度の妥協はあるだろう。しかし、意見広告スペースが改憲派で占められるのは変わらない。