[海外] パレスチナ/内部抗争解決に向けたPFLPの立場
カーラ・ラヴァロック (ベツレヘム在住カナダ人。AIC発行の『NEWS WITHIN』共同編集者。)二〇〇七年二月発行の『NEWS WITHIN』より抜粋翻訳)
「囚人文書」を土台に統一政府を
二〇〇六年一月のパレスチナ評議会(議会)選挙でハマスが勝利した後、ハマスとファタハの抗争が世界の注目を集め、米・欧州・イスラエルの介入をも招いている。しかし、あの選挙では一〇%を超える票を、ハマスとファタハ以外の左派進歩勢力が集めている。主要にはDFLP(パレスチナ解放民主戦線)とPFLP(パレスチナ解放人民戦線)である。
ここでは、最近の内部紛争に関して、PFLPの意見を紹介する。(脇浜)
×
囚人支援人権擁護組織の会長カリーダ・ジャラールは、二〇〇六年の評議員選挙ではPFLP代表の議員に選ばれた。現在の内紛とパレスチナ社会の行き詰まりについて、PFLPは「ファタハとハマスの両者に責任がある」と批判している。「民族和解を訴える囚人文書が出た時、民族統一政府樹立とPLO改革を説くこの文書にパレスチナの全政治勢力が同意したではないか」と彼女は言う。
ところが、ファタハもハマスもそれぞれ身内だけで統一政府について議論し、他党派や集団と話し合わなかった。しかも議論の内容は囚人文書に基づくものでなかった。ファタハもハマスもパレスチナ自治政府(PA)支配をめぐる権力闘争をしているだけだ、と彼女は批判する。「PAとは本来内部的にも外部的にもパレスチナをまとめ、パレスチナ人の情況を良くし強くするための機構であるべきなのに、彼らは権力機構としてのPAの支配権争いをしているのです」
すべての政治的集団は平等であるべきで、対等の資格で現在の抗争を解決し、袋小路を抜け出すための役割を果たすべきだ、と彼女は主張する。パレスチナの経済的・社会的諸問題を解決するためには、強力な政治的リーダーシップ樹立が必要である。しかし、「ファタハはPLOを使ってハマスと争い、ハマスはPA とPLC(評議会)を使ってファタハと争っているだけだ」と彼女は言う。「こんな状態では、対立と暴力の応酬が増えるだけだ」
権力争いをやめ、率直な話し合いを
ジャラールによれば、PFLPはアッバス議長が提案する「前倒し早期選挙」は解決にならないと考えている。民族統一政府をどのように作るかについては、全政治勢力が意思決定過程に加わるべきであるから、「全党派や集団の合意が形成されていないまま慌てて選挙を強行すれば、かえって問題を大きくするだけ」だからである。
PFLPは、民族統一政府樹立に向けての議論は、内部紛争解消のための統一政府作りとPLO改革を二本柱として訴えている「囚人文書」を土台にすべきである、という立場だ。この文書はイスラエル獄中の活動家たちが党派を超えて共同で出したものだ。
ジャラールは、ハマスとファタハの間の確執を単純なものと見ている。「パレスチナ人の代表となる権力を取り合う争い」にすぎない。いかなる政党も集団も、パレスチナは全体として纏まってイスラエルの占領に立ち向かう必要性を理解すべきだ、と彼女は言う。「すべての党派や集団がいっしょになって占領に抵抗し続けることができる戦線組織、また占領下で生じるパレスチナ内部の諸問題を率直に話し合うことができる大戦線を作るべきです」