[情報] アジア労働運動、低賃金不安定雇用の増大と農村破壊
APWSL(アジア太平洋労働者連帯会議) 喜多幡圭秀
ユニオンフリー
労働運動分野での同時代性とは、非正規雇用の拡大と労働組合外しです。日本の「労働ビッグバン」も、外国のモデルを拙速に取り入れたに過ぎません。
労働組合の組織率は世界的に低下していますが、ウォルマートのように「ユニオン・フリー」つまり労働組合不在という、資本家にとっての理想がまかり通る時代になっています。
一〇年ほど前にニュージーランドで、個人協約制が導入され、組合の組織率が一挙に半減しましたが、各国で同様の改悪が行われています。
ヨーロッパではEU統合によって、労働条件の低いところに合わせて労働条件が切り下げられましたし、多国籍企業には本社が置かれている国の労働法や最低賃金を適用するという提案まで検討されています。東欧の労働条件の低い国に本社を移転すれば、その労働条件が国境を超えて適用されるわけです。
グローバリゼーションの中で、アジアの労働運動は大きな困難に直面しています。APWSLが設立された一九八〇年代には、軍事政権下における民主化運動と新しい労働運動が広がりをみせていました。
一九九〇年代には、草の根の労働組合運動のネットワークが発展しましたが、従来の戦闘的・左翼的な労働運動は急速に影響力を失ってきました。
韓国では今も毎年ゼネストが行われ、戦闘的な争議が展開されていますが、その一方で民主労総の内部の対立・矛盾が深刻化しており、動員力が低下し、社会的影響力も低下しています。
後退の根本的原因は、新自由主義グローバリゼーションに総体として対応できていないことです。アジアの左派労働運動の基盤は、国営企業でしたが、九〇年代以降の急激な民営化で大きなダメージを受けました。
製造業でも、工場閉鎖や企業移転が相次ぎ、組合組織化が困難な状況が続いています。さらに、新しい分野、たとえばサービス産業や情報産業の非正規労働者の組織化が、課題としても取り上げられていないという深刻な状況です。
雇用確保のためにどんどん労働条件が切り下げられるという「底辺に向けた競争」にさらされ、「国境を越えた競争」に対して有効に反撃する方法を見いだしていないのです。