[社会] 野宿者より「私の声を聞いてほしい」
1月10日、長居公園テント村で暮らす久原さん(仮名・50才)は、立ち退きを求める大阪市に『弁明書』を提出した。彼の『弁明書』の前半部分を掲載する。(編集部)
そんなに私たちの存在が恥ずかしいですか
私は、この三年間長居公園で生活してきました。今回、大阪市が私たちの住居を強制撤去しようとしていることには到底納得がいきません。
大阪市の言い分は、以下のようにまとめることができます。 @ テント村周辺が夜間暗いので、街灯設置などの整備工事が必要。その工事のため、テントを撤去する必要がある。 A 大阪市は、代替住居として自立支援センターなどへの入所を勧めてきたから、強制撤去後に私たちが路頭に迷うことになるとしても、それは一切私たちの責任であり、大阪市の側に非はない。 B そもそも、テントは都市公園法上の不法占有に該当するから、強制撤去が可能。 以上の各点について、私なりの考えを述べていきます。
まず@についてですが、なぜ、この一帯だけ街灯設置工事が必要なのか、理解に苦しみます。テント村周辺が長居公園内で特に暗いということは全くありません。現に、テント村前のジョギング・コースは、夜間でも通行する人がたくさんいます。長居公園内の他の場所にこそ、もっと暗くて夜間誰も通らないような道路がいくつもあります。
私たちは整備工事自体に協力する意志はあります。だからこそ、今回の工事の話がなされたときにも、テントを建設できる代替地を求めてきました。私たちの生活は今のテント村なしには成り立たないからです。
なぜ公園事務所は、テント村を公園内の他の場所に移転させることを認めてくれないのでしょうか。スタジアム周辺で野宿している人たちにも退去が強要されていることも考えると、大阪市は長居公園から野宿者を一掃しようと急いでいるとしか思えません。
なぜそんなに急いで野宿者を排除しようとするのですか?国際的イベントが開催される長居公園に野宿者が生活していることが、大阪市としてそんなに恥ずかしいですか?雑多な人間が集う私たちのテント村が、そんなに見苦しいですか?
大阪市内外での排除では、「野宿者がいると、市民や子供たちが恐がるので、公園を利用したくても利用できない」という「世論」が根拠とされています。しかし、この「世論」は事実無根だと思います。私たちは、市民や子供たちから襲撃やイタズラをされたことはあるものの、彼らを恐がらせたことはありません。
小学生くらいの子供たちにテントを蹴られたり砂をかけられたりしたときには、「誰が子供たちをこんな風に育てているのだろう」と思い、大変悲しい思いをしました。それでも私たちは、長居公園周辺の地域の人たちとの関係を大切にしたくて、これまでここで生活してきました。
生きるために必死だった野宿生活
次に、Aについてですが、マスコミ報道などでは、私たちは「代替住居として自立支援センター入所を勧めてきたのに応じていない」などと、いかにも「我儘で野宿生活を続けている」かのように書き立てられています。しかし、これは全くの誤りです。
私は三年前まで調理師として働いていましたが、失業が原因で野宿生活を始めました。万策尽き果てて、飯を食うために止むを得ず、生まれて始めてゴミ箱に手を入れようとしたとき、私がどれほど躊躇したか、あなた方に分かりますか。生きるために必死だったからこそ、それができたのです。決して好き好んでできることではありません。それでも何とか、廃品回収の仕事をしながら食いつないできました。
公園内に定住して生活していれば、地域住民の人たちとも関係ができてきます。野宿問題に関心がある人たちも訪れてくるようになりました。そのうち、各方面に人間関係ができて、アルバイトもできるようになりました。
今、私は自立しています。自力で稼いでいます。アパートを借りて家賃を払えるほど稼いではいないけれども、公園の片隅で野宿しながらであれば、何とか生活できています。野宿生活を始めてから、いろいろと苦労して試行錯誤しつつ、地域の人たちと関わりあいながら、今の生活を築いてきました。どこかの銀行や空港会社や娯楽施設などとは違い、行政の手助けは一切なしで生活してきました。今の行政に雇用を創出する能力がないことくらい、誰の目にも明らかですしね。