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[コラム] 追悼・田中義三

二〇〇七年一月三日　前之園紀男

田中。明日、焼酎持って行くよ。煙草もな。ハイライトでいいか？アマリア・ロドリゲス、知っているか？ポルトガルの美空ひばりだ。ファドと言ってポルトガルの演歌を歌う人で、それは素晴らしい歌だ。レコード屋にあったら買っていく。娘さんたちにかけてもらう。お前の好きな歌も忘れたが奥さんにかけてもらって聞かせてもらうつもりだ。

田中、疲れたなあ。いい寝顔でうらやましいぐらいだ。そんなにいい寝顔になるにはどれだけの苦労をしなければならなかったんだ。七〇年から三六、七年。カンボジアでアメリカに捕まってから一一年か。家庭生活は実質一年なかったと奥さんが言ってた。どんな苦労したんだ。

それにしても、タイの刑務所はひどい所だな。何も知らなかった。両足に鎖をつけられていたんだって。こっそりアメリカに移動させられる前に、たまたまＦテレビのＭさんとカメラマンの人がタイの警察署にいたのだが、お前の方が日本人の彼らに気付いて声かけて、それで日本にニュースが流れて、アメリカは手を引いたらしいな。そして宮崎ら支援者のおかげで無罪になって。

二月はじめあたりに「お別れ会」のようなことを考えている。みんなに相談して、多くの人に来てもらって、お前はドンチャン騒ぎが好きだから、にぎやかにやれればと思っている。

七分間の正月はどうだった。一二月一五日に出て、たった一六、七日間のシャバはどうだった。俺はたった一六、七日だったとどうにも思えない。一ヶ月はたったような気がしてならない。

さっきタイはひどいと言ったが、日本もひどいな。囚人には成人検診もないんだからな。殺されたようなものだ。東拘も建物は立派になったが、全く日光を奪ったらしいからな。面会などプラスティック越しの冷たさだ。タイの方がずっと自由だったようだな。

田中、お前は闘いの人間だ。闘いのまま墓場に行ったな。立派だ。小西から年賀状もらった。「田中のこと大変お世話になり感謝しています。くれぐれもよろしくお願いします。力になってやって下さい」とあった。俺は一番の果報者だ。「護憲革命、面白いですね。いつかじっくり話し合いませんか」ともあった。そうするつもりだ。お前も言ったな。「あれいいですね」だったかな。議論も約束し、録音も考えたんだが、続きは小西とやるよ。

お前の原稿や手紙など整理して、何らかの形で出版しようと思っている。俺は今の日朝、米朝関係は全て戦争状態からきていると考えている。「戦後」六〇年なのに未だに戦争状態という異常が全ての原因と思っている。みにくい日本の違憲クーデター政権と、それを許している我々が全ての原因と思っている。この政権を倒して、護憲護民政権を樹立し、日朝の平和条約を結ばない限り、解決はないだろうと思う。どうだ。

それから、お前が読めといった金南植さんの『二一世紀民族を語る』は第二章の途中まで読んでいる。いい本だ。最後まで読むよ。

この辺でやめる。酒は残ったら棺に入れるよ。

乱筆、乱文ですまん。こんな文しか書けない。（編集部で一部省略）