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[海外] パレスチナ／イラン大統領へ　ホロコースト否定は闘いの正当性を傷つける
パレスチナ人活動家からイラン大統領への公開書簡

筆者：マハムード・アル・サファディ　翻訳：脇浜義明

大統領閣下。

私はマハムード・アル・サファディです。ＰＦＬＰのメンバーとして第一次インティファーダでイスラエル占領軍への抵抗運動のために、イスラエル刑務所で一八年間も服役し、三ヶ月前に釈放されたばかりです。

私は、閣下が大統領に就任されて以来、ずっと閣下の発言、とりわけユダヤ人ホロコーストに関する発言を、大きな関心をもって追ってきました。私は、貴国に関して米国や西側列強が指図することに閣下が反対し、核開発に関する世界の二重基準を批判されていることに、敬意を表するものです。

しかし、閣下が、「ホロコーストは存在しなかった」と発言され、ナチ強制収容所や絶滅収容所で殺害されたユダヤ人の数に関して疑問を提起し、結果としてナチの歴史的犯罪を否定されたことには、激しい憤りを感じないではおれません。

大統領閣下、恐れながら閣下は、ナチの死の産業に関する知識を持たずに上記のような発言をされたのではないでしょうか。反ユダヤ主義者の書いたものをかじり読みして発言されたのかもしれませんが、閣下の発言は、井戸の上で発言するのと同じで、巨大な反響を招きます。それはご自身ばかりか、閣下が敬愛するイラン国民にも跳ね返ることになります。

閣下や世界の多くの人々 ― 悲しいことにその中には多くのパレスチナ人やアラブ人も含まれています ― と同じように、私も「ユダヤ人は誇張してホロコーストについて嘘を言っている」と思っていました。たとえシオニズム運動とイスラエル政府が、我々パレスチナ人弾圧政策のためにホロコーストを利用している事実があるにしても、ホロコーストを否定することはできないのに、それに無知でした。

長期にわたる刑務所暮らしの間に、たくさんの本や論文を読む機会があり、刑務所の外では凝り固まったイデオロギーや社会的規範のために接することができなかった多くの知識を得ることができました。

ナチ政権と彼らが行なったジェノサイドの歴史を知ったのもその時でした。一九九〇年代初め、パレスチナ人知識人エドワード・サイードやアズミ・ビシャラを読んで、それまでの自分や多くの仲間が思っていたこととは矛盾する歴史的事実や思想を知ることができました。私は、ホロコーストとナチ占領を生き延びた人々の書いたものを読み漁りました。ユダヤ人だけでなく、非ユダヤ人の証言も読みました。

知れば知るほど、ホロコーストがナチがユダヤ人、障害者やジプシーなどの社会的マイノリティ、及び人間一般に対して犯した人類史上最大の犯罪であると思うようになりました。「不純な人種」を物理的に消滅させ、他民族を隷属化することによってナチ・ドイツは、「純粋なアーリア系民族」が支配する「新世界秩序」を建設する野望を抱きました。「普通」の役所機関 ― 官僚、司法制度、医療や教育、市町村役場、鉄道会社等々 ― も参加協力したことを知りました。理論的には、このナチの野望は、アラブ人やイスラム教徒の存在をも脅かすもので、実際、ナチ占領軍の勝利がアラブ人を傷つけました。

ホロコースト犠牲者（非ユダヤ人も含む）の数の問題ではなく、その犯罪そのものが人類史的な規模のものなのです。それを否定しようとする人は自らの人間性を否定し、身を迫害者の側に置くことになります。ホロコーストの事実を否定する人は、自民族が外国の圧制者によって苦しめられ、迫害されている事実を他者から否定されても、驚き、怒る権利はありません。

どうか次のように自ら問うてください。死の収容所、ガス室、ゲットー、ドイツ軍による大量殺戮に関する何千・何万という証言、ドイツ軍が残した公文書に基づいた調査や映像フィルムの数々、これらがみんな捏造された偽りの「証拠」だというのですか？みんな帝国主義的シオニスト的策謀だというのですか？ナチ高官の犯罪告白はたわごとだというのですか？ドイツ占領に対する英雄的な闘い ― ロシア人の、ポーランド人の、ユーゴスラビア人の闘いもみんな嘘で巨大な誇張だというのですか？ソ連の反ナチ戦争も単なる幻影だというのですか？