[情報] 尼崎市長選/市民派市長、自公候補にダブルスコアで圧勝
圧勝もたらした「市民直接対話」
一一月一九日投開票の尼崎市長選挙は、現職市民派市長・白井文氏(一〇万一三八八票)が、自公推薦の谷川正秀候補(四万七四八七票)にダブルスコアーで快勝した。現職とはいえ、既成政党としては共産党が「支持」したのみで草の根市民が支えた白井氏が、自公連立の国政与党候補に大差をつけての勝利は快挙といえる。勝因と今後の展開についてレポートする。
「冬柴鉄三衆議(公明党)が決起集会で土下座をした」-こんな情報が入ってきたのは、選挙戦最終盤の一一月一七日。自公推薦の谷川候補は、安倍首相とのツーショットを選挙ポスターに使い、自公の大物政治家を次々と尼崎に招いた。尼崎は公明党元幹事長・冬柴鉄三の選挙区で、強力な支持基盤がある。それだけに冬柴衆議が土下座したのは、強い危機感の表れである。
実際、冬柴のみならず「やるだけのことはやった」と公明党幹部は胸を張る。神戸新聞の出口調査では公明支持層の八五%が谷川氏に投票したと報道している。一方白井陣営は、政党・団体の推薦は受けず、共産党が「支持」を表明したのみ。尼崎市長選は、国政与党対無所属市民派という構図で組織力からいえば、谷川候補が有利だった。
谷川大敗の原因は、まず、対立候補=谷川のひどさだろう。父親は参議院議員・谷川秀善、家業は「万徳寺」住職。二八才で市議初当選以降、五期市議をつとめ市議会議長の経歴も持つ四三才の若手政治家となれば、十分無党派層の支持を獲得できる候補だった。
ところが、華やかなプロフィールの裏で、業者からの口利きの噂が絶えず、「金に汚い、女性関係が派手」、とその体質は、保守の利権屋そのものなのである。こうした体質は、自民党市議の一部が白井市長支持に回るという結果を招き、自民党内部からも「世間知らずのぼんぼん」「傲慢」の批判がある。
こうした政策不在の利権屋的体質は、選挙ビラに如実に表れた。安倍首相の写真を前面に出し、「共産党が推す市長に市政を任せ続けますか?」というネガティブキャンペーンに明け暮れた。
白井氏の勝因は、市民との直接対話の蓄積だ。継続した車座集会をはじめ、環境・ジェンダー・障害などテーマを問わず各種団体との対話を重ね、市政批判にも真摯に耳を傾けてきた。
「財政再建」を柱に据えながらも障害者自立支援法通過後は、障害当事者の自己負担増を緩和するため三億円の予算を確保して補填するという尼崎市独自の施策を実施。低所得者向けの医療制度支援や国保の補填は増額した。市の借金を八〇〇億円ほど削減したが、七割程度は職員の人件費削減で達成しており、福祉切り捨てによる財政再建ではない。