[コラム] 深見史/「いじめ自殺増加」犯人はマスコミだ!
いじめによる自殺が増えている、とは本当だろうか? 正確には、「いじめ自殺が増えている、という大量の報道によっていじめ自殺が増えている」と言うべきではないのか。
自殺報道が連鎖を生むことはおよそ周知のことである。ゲーテの「若きウェルテルの悩み」の発表直後、ヨーロッパ各地で若者の自殺が相次いだという。このことから、連鎖的な自殺のことを「ウェルテル現象」と呼ぶらしい。日本でも藤村操の華厳滝投身、昭和初期の三原山投身事件、岡田有希子事件等、ウェルテル現象といえる問題が多々おきている。マスメディアの発達にともなって、ウェルテル現象も様相を変え、ネット自殺等の新たな問題も起きた。連鎖自殺に関しては過剰報道が大きな原因となることは、過去に何度も指摘されたはずだ。
しかしマスコミ報道は例のごとく、センセーショナルな見出しで子供の自殺を連日取り上げ、「ほら、また自殺だよ、みんな自殺してるよ、簡単にやれるよ」という悪魔のメッセージを流し続けている。その結果、マスコミがネタとして欲しがっている「子供の連日の自殺」という「大きな社会問題」ができあがるのだ、
朝日新聞は自殺報道に関する検証?記事の中で、WHOの基準を示している。
WHOの報道用「自殺予防の手引」には、「してはならないこと」として「遺体や遺書の写真を掲載する」「自殺方法を詳しく報道する」「単純化した原因を報道する」「美化したりセンセーショナルに報道したりする」等々と記されているらしい。 これらは、マスコミがこぞって繰り返し繰り返しやってきたことではないか。自らを省みることなくこんな基準を載せるとは、偽善者朝日であればこそ、と感心するしかない。
数字だけを示してみる。
年間の自殺者数はおよそ三万人、そのうち群を抜いて多いのは五〇代、小中学生は百人以下だ。殺人は年間千五百人あり、加害者のほとんどは男性で、夫に殺される妻は三日に一人いる。 この数字だけからでも多くの「センセーショナルな社会問題」を作ることができる。「不況の生む悲劇…増え続ける働き盛りの自殺…今日も五十歳が死んだ…」「夫に殺される妻たちの叫び…隣人は『知らなかった』…問われる地域」「男たちはなぜ殺すのか?…専門家の語る男の攻撃性…男たちの心の闇に迫る」などなど。
毎日数件の殺人が起こり、八〇人以上が自殺しているという中で、報道は選択的である、という当然のことを確認していなくては、マスコミ権力の罠にたちまち陥ることになる。
外国人犯罪の増加、という嘘の報道を大量に流すことで、外国人イコール危ないヤツ、という風潮が出来上がった。それを受けて現在、日系人等の「定住者」は在留資格の更新の度に無犯罪証明なるものを提出することが義務付けられた。外国人は潜在的犯罪者であるという烙印を押されたに等しい。
少年犯罪が増えている、という大嘘報道が少年法改悪に結びつき、「人権団体は加害者の権利ばかり主張する」「被害者の権利が守られていない」という御用マスコミの大嘘キャンペーンが重罰化を招いた。
いじめによる自殺があることは確かだ。子供たちをそこまで追い詰める社会、学校、家庭を作ってしまったのは私たち大人だ。私たちは子供を守るために、個々の場で真剣に考えなければならないだろう。
そのためにも、「遺書の写真を掲載」し「自殺方法を詳しく報道」し「単純化した原因を報道」し「センセーショナルに報道」するマスコミに惑わされない、正確な情報を得るための努力をしていこうではないか。