[政治] 米国が1万個の核を解体するなら北朝鮮制裁決議にも道義がある
北朝鮮核実験実施宣言にたいして
編集部は、朝鮮半島を含む東アジアの非核化を願う立場から、北朝鮮政府による核実験宣言を支持できない。
しかし、非難・制裁を叫ぶ前に、北朝鮮が負っている現実的脅威をまず理解する必要がある。イラク・フセイン政権は、核査察を受け入れたにもかかわらず、「大量破壊兵器を隠し持っている」として攻撃され、政権崩壊に追い込まれた。ブッシュ政権から同じく「ならず者国家」と名指しされている北朝鮮・イラン政府が、核開発計画放棄を拒否するのはむしろ自然な流れだ。北朝鮮核実験を誘導したのは、ブッシュ政権である。
さらに通常軍事力の圧倒的な差がある。北朝鮮と米・日は、軍事費比較で米国=四五二五・五億j、日本=四二三・九億j、北朝鮮=一六億j(いずれも二〇〇四年。ストックホルム国際平和研究所データベースによる)。北朝鮮の軍事予算は、日本の三%、米国の〇・〇三%。これに装備性能の差も加味すれば、物理的戦争遂行能力の差は歴然としており、この圧倒的劣勢を補う抑止力としての「核」である。
「暴力に対して暴力で抗するのは愚である」という非暴力の考え方は一つの見識であり、敬意も表したい。が、米国の「核の傘」の下で「平和」を享受する者が、現実的脅威を負う北朝鮮に対して押しつけられる論理ではなかろう。
牧野一樹氏の訪朝記(二面)にあるように、北朝鮮はここ数年、経済改革に取り組み、一定の成果も上げつつあるようだ。このような国が自ら進んで破滅の道を選択することなどあり得ない。稀少な資源を軍事力ではなく経済建設に振り向けられるよう、軍事的緊張を解くことの方が、日本の我々にとってもよほど確実な安全保障だ。
北朝鮮の核実験実施宣言は、安倍政権出帆への祝砲となった。対北朝鮮強硬姿勢を売り物にしてきた安倍首相の支持率は上がり、共謀罪その他の治安関連法成立もにわかに現実味を帯びてきている。
日米両政府は、核実験宣言を利用して米軍再編・日米軍一体化を推し進めようとしている。地対空誘導弾パトリオット二四基を嘉手納基地などに配備し、北朝鮮船舶の「臨検」実施に向けた実務的打ち合わせも開始した。日米合同による北朝鮮船舶の「臨検」は、軍事衝突に発展するおそれもあり、さらなる緊張を生み出す危険な挑発行為となる。