[海外] 落日のアメリカ「悪の枢軸」と、旭日のキューバ「善の枢軸」
──キューバ円卓会議共同代表 樋口篤三
中南米諸国への圧制・反人権帝国
二〇世紀は、「アメリカの世紀」であった。第二次世界大戦、とくに太平洋戦争では、日本軍に対してアメリカの軍事力と経済力は決定的強さを発揮した。
一九九〇年前後のソ連圏崩壊後は、唯一の超大国として世界に君臨した。何が善であり、悪なのか。正義、人権、自由と民主主義等に関する判定は、米国が検事であり、弁護士であり、裁判長であった。
中南米諸国は、この百年余にわたって「アメリカの裏庭」として植民地従属国化され、米帝国の政策に異議をとなえる国家は、CIA(中央情報局)によって、たちどころに打倒され、指導者は追放された。その代表例が、チリのアジェンデ社会主義政権に対するCIA工作(資金は米大企業)だ。直接選挙で大統領に選ばれたアジェンデ氏は、大統領官邸における銃撃戦で射殺された。
アメリカ帝国の全一的支配下で、敢然と抵抗して屈せず革命政権を存続させたのはキューバだけであった。
カストロ暗殺計画600回!
フロリダからわずか一五〇キロの近さにあるキューバで、「北の巨人」の威力に従わず、社会主義政権が生きつづけること自体が、米国にとって許し難いことであった。
革命直後からカストロ暗殺計画がCIA中心に検討され、「一九六〇年ごろには、シカゴ・マフィアの大ボス、サム・ジアンカーナに一五万ドルを渡して暗殺依頼したことが解禁された米外交文書で明らかとなった。(九七・七・二朝日)
以来、カストロ暗殺計画は実に六百回以上に及んできた(公文書の集計)。一九六一年には米海空軍の援護下に亡命キューバ人ら一五〇〇人がビックス湾に侵入上陸して戦争に。七六年にはベネズエラ発のハバナ行キューバ航空機が爆破され、スポーツ選手七三人が死亡した。これらの中心テロリストが亡命キューバ人のルイス・ポサダだった。彼は、パナマの国際会議でもカストロ暗殺を図ったが、発覚して二〇〇〇年秋に逮捕され、八年の実刑を受ける。しかし、米国の手下であったモスコリ前大統領が〇四年に政権を去る時に恩赦で釈放され、マイアミの反カストロ派によるチャーター機で米国に逃げ込み、米国はそのまま受入れている。
米国はこの数年「テロとの闘い」を国家戦略の第一にかかげて、アフガン・イラク戦争をおこし、イスラエルによるレバノン・ヒズボラ攻撃を支援してきた。
が、キューバを筆頭とする中南米諸国家への米国政府による相次ぐテロは、政治外交戦略の要であり、『国策』として行われた。リチード・ヘルムス元CIA長官が〇二年に死去したが、彼は「キューバのカストロ首相暗殺計画やチリのアジェンデ政権転覆に関与した」(朝日〇二・一〇・四)と公然と報道された。