[海外] パレスチナ/獄中から18か条の「民族和解文書」発表
翻訳/脇浜義明
難民帰還権確保し二国並存解決 パレスチナ人77%が支持
六月初め、現在イスラエル刑務所で捕われの身となっているパレスチナ各派の指導者たちが、「民族和解文書」を共同で発表した。これは、暗にイスラエル国を認め、西岸地区、ガザ回廊、東エルサレムを領土とするパレスチナ国樹立による二国並存解決と、すべての難民の帰還権を要求し、一九六七年前のグリーンラインを越えてパレスチナ領内にいるイスラエル人だけを攻撃する武装集団の設立を提案している。署名者は、ファタハのマルワン・バルグーチ、ハマスのアブデル・ハレク・アル・ナトシェヘ、PFLPの副代表アブデル・ラヒム・マルーハ、DFLPのムスターファ・バダメヘ、イスラム聖戦のバッサム・アル・サッディ師。
内容は一八項目。以下簡単に箇条書きすると、
@地元と外国に住むパレスチナ人は国土の解放、自由の実現、帰還する権利、独立を求めている。その中には、一九六七年に占領された土地を領土とし、エルサレムを首都とする独立パレスチナ国樹立も含まれている。
A二〇〇五年カイロ協定(パレスチナ各派間の)に基づいてPLOを復権・再活性化、ハマスとイスラム聖戦をPLOに加入させ、PLOをパレスチナ人民の唯一の正当な代表とすること。
Bパレスチナ人民は様々な方法で抵抗する権利を保持するが、抵抗は一九六七年に占領された領土内に限ることとする。もちろん政治的・外交的活動も合わせて行なう。
Cパレスチナ民族コンセンサス、アラブサミット、国連決議、PLO綱領、公正な国際社会の提案に基づいて、包括的な政治的行動計画を作成すること。
DPA(パレスチナ自治政府)を未来のパレスチナ国の核として擁護し強化すること。PAの暫定的憲法、現存法、選挙で選ばれた大統領と政府を尊重することがパレスチナの利益に繋がる。
Eすべての議会勢力、とりわけファタハとハマスによる民族統一政府を作ること。
FPLOとその議長(大統領)は平和交渉続行を担う。その交渉はパレスチナ人民の民族的目標に依拠し、それを実現することを基礎にして行なう。重大な合意を行なうときは、必ずPNC(パレスチナ議会)または民族投票で承認を得てから行なう。
Gイスラエルに拘束されている全パレスチナ人囚人や抑留者の解放は聖なる義務で、いかなる手段を用いても実現すること。
H難民を援助し、権利を擁護し、彼等の故郷への帰還権を実現するための人民組織を作り、辛抱強く活動を続けること。
I占領に抵抗するためにパレスチナ抵抗戦線(PRF)と呼ぶ統一戦線を結成すること。
J民主主義を守り、大統領、議員、市町村長を自由で公正な選挙で選ぶこと。
Kイスラエルと米国によるパレスチナ人封じ込め政策の不当性に抗議し、アラブ諸国にPAとPLO支持を訴えること。
Lパレスチナ人の団結を高め、PA、大統領、PLO、政府のもとで一致団結すること。
Mいかなる内部不和や内紛も非難されるべきで、武器をもって内紛や個人や建物を攻撃してはならない。
Nガザ回廊の同胞が自由と独立への闘いに参加できる方法を探しだすこと。
Oパレスチナ治安隊が郷土や住民を守り、イスラエルの侵略者と対峙し、法と秩序を施行できるように、それらを改革し発展させること。
PPNC(パレスチナ議会)に治安部隊や保安隊を改変し、治安部隊員の政治活動や派閥活動を禁止する法律を作るように要請すること。
Qイスラエルの占領、入植地、人種差別的分離壁に対する我々の正義の闘いを支援してくれる国際連帯運動や平和団体の努力や役割を評価し、協力すること。
訳者注
ヨーロッパは、イスラエルのガザへの空海陸からの攻撃や非人道的な生活物資の流通の妨害を、「やり過ぎ」と批判。それに対しオルメルトは「正当な戦争」と返答。そのくせ捕らえられた兵士を「戦争捕虜」と呼ばず、「拉致」と言い、捕らえている数万人のパレスチナ人を「犯罪者」と呼んで、自ら戦争を否定している。日本の新聞も「拉致」を使っている。
しかしイスラエル国民はこの「戦争」に批判的で、かつてのレバノン戦争反対を思わせる。批判的社説を書く新聞も多く、世論調査でも「戦争」ではなく、交渉による捕虜交換を望む者が五八%もいる。