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更新日:2006/07/25(火)

[コラム] 山村千恵子/性売買が人権侵害か、性売買禁止が人権侵害か?

性売買特別法と、性労働者組合

私たちがめざす社会が実現したなら、存在しなくなっているはずの人たちがいる。軍人、基地労働者、原発労働者などなど、それらのひとつに売春従事者がある。

フェミニストの一部に、セックスワーカーの権利が主張されてきた。「売る売らないは私が決める」と、売る権利を含めた性の自己決定権が唱えられる。しかし現実的には、害あって益なしの「売春防止法」がのさばっている。

また、日本男性の買春率は欧米に比べて異常に高く、買春を恥じるどころか自慢する傾向すらある。売る自由、買う自由がもてはやされ、性産業は限りなく膨れ上がっている。その陰で、米国務省が二〇〇四年に発表した「人身売買報告書」では、先進国で最悪の人身売買国として日本は監視リストに入れられた。

同じ二〇〇四年の九月、韓国では『性売買特別法』が本格的に施行された。ここでいう性売買には、直接的な性交のないわいせつ行為も含まれる。

この法律の特徴は、これまでは日本と同じく、売春女性の摘発であったのに対して、買春男性と斡旋業者に重点を置いて処罰する点だ。売春女性は、自発的である場合は処罰され、脅迫や監禁などによって強要された場合は「性売買被害者」に分類され、処罰されない。

それに対して買春男性は理由を問わず無条件で立件の対象になり、一年以下の懲役または三百万ウォン以下の罰金を科せられる。

そして斡旋業者に対しては、人身売買、強要、斡旋の形態別に細分化して量刑を科す。性売買を前提とした前借は無効で、借りた女性はそれに縛られる必要がなく、返済もしなくてよい。

今の日本では過激とも見える法律の制定に、不安を感じつつも、期待を持って注目した。

施行されるとすぐに、ソウルや釜山で売春街の事業主と従業員による「生存権の保障」を求めるデモが湧き起こった。まもなく事業主に動員されたことなども判明したが、彼らの生存権を脅かす法律であることは確かだろう。

そのデモや集会をきっかけに、セックスワーカーの労働組合をつくる動きが起こった。二〇〇五年六月には「性労働者は非正規職労働者である。生存権と労働権を保障しろ」と主張し「全国性労働者組織準備委員会」が公式に発足した。「いわゆる参与政府(国民がつくる政府)という盧武鉉政権下で、性売買禁止主義という反人権的な政策が強力に施行されるのは理解できない」というのだ。

これに対して、被害女性支援を中心に活動してきた女性運動勢力は、「性売買は女性への暴力であり、早期に根絶するために性売買特別法を改正、またはさらに強力に施行しなければならない」という立場だ。「家父長制の中で女性の性は常に商品化され、暴力にさらされてきた。それが極端な形で現れたのが性売買である」と。

性売買は人権侵害なのか、性売買を否定することが人権侵害なのか。これは日本のフェミニズムの間でも意見が分かれるところだ。人身売買、監禁、強制は論外として、自発的と分類されるものの中にも、生活のため、家族のため「追い込まれた」人が多数いるはずだ。追い込まれたのではなく、学費を稼ぐために自発的に選んだという人ですら、社会が返済の必要のない充分な学費を保障していれば選ばなかった可能性が高い。そう考えれば、「金が力」の現社会では売春で稼いで夢の実現を志す女性も、売春で稼ぐことをしないで夢をあきらめた女性も、共に人権を侵されているのであって、対立する命題ではない。

反戦運動、反基地運動、反原発運動は、そこで働く人たちの生業を奪う運動だともいえる。生活権を奪ってはならないが、その仕事が永久に続くことを願うわけにもいかない。働く人間が存在する限り、労働条件を改善するための組合も必要だろう。しかし解体を目指す組合でもあるという矛盾を感じつつ、韓国の性労働者組合の行方を見つめていこうと思う。

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