[海外] パレスチナ/知的自由侵略に無自覚なイスラエルの大学人
『占領マガジン』(六月三日)
訳者(脇浜義明)より
英国最大の教員組合「全国継続・高等教育教員連合」(NATFHE)は、「パレスチナ占領を黙認または協力するイスラエルの学者や大学・研究機関をボイコットする」という動議を五月二九日の年次総会で可決した。
これに対しイスラエル教育相は「学問の自由への侵害であり、大学を政治争いの具にすることだ」と非難。右翼国家統一党のオルレヴも「反ユダヤ主義による差別」と激怒、ハイファ大学は「これは一種のマッカーシズム」と声明を出したが、いずれも自国政府や軍部の悪行に言及するものはなかった。
そのくせ一方で、イスラエル政府は、諜報機関シン・ベトのメンバーを優遇して学位を与えるなど、学問への政治介入を行なっている。
英政府も「学問的協力の方が学問的ボイコットよりも生産的」として、教員組合を批判した。ガーディアン等のマスメディア、ユダヤ人団体らもボイコット取り消し運動を展開している。パレスチナの学界は概ねボイコット歓迎だが、イスラエルの良心派学者までがボイコットに反対するなど、かなり複雑な形相を呈している。
しかし、肝心のパレスチナ教育がイスラエルからボイコット以上の弾圧を受けていることが議論にあがってこないのは不公正である。以下パレスチナのビルゼイト大学の「教育の権利運動」の見解を訳する。(訳者)
学問したければパレスチナを出ろ
研究・教育活動または沈黙を通して占領政策の共犯者となっているイスラエルの大学・研究機関・学者に対する英国の教員組合のボイコット決議に関して、多くの批判が出ているが、そのどれ一つとして、コインのもう一面、即ちパレスチナの大学や研究機関が直面する現実に触れたものは一つもない。
和平に賛成するがボイコットに反対する良心派議論の核心は、「大学というのは建設的議論が可能な唯一の場で、学問の自由はイスラエル政策を変え、最終的に占領を終わらせる原動力となるものだから、イスラエルの大学へのボイコットは好ましくない」というもの。この議論に欠けているのは、パレスチナの学問・教育がイスラエルによって弾圧・束縛されている限り、紛争解決への展望が開けないという認識である。パレスチナの教育を弾圧するイスラエルへの批判的働きかけがいけないというなら、いったい対話や和平努力を目覚めさせる方法が他にどんなものがあるというのだ。