[政治] アジアのFTA、何が問題か?
京都 交流討論集会 タイとフィリピンの活動家を迎えて
はじめに
経済産業省が、今年三月、グローバル経済戦略の概要を発表した。二〇〇八年を目処に東アジア経済統合に着手し、日本企業の国際展開を支援するというものだ。この一環としてFTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)の活用を位置づけるという。
こうしたなか六月一五〜一六日、東京で世界経済フォーラム東アジア会議が開かれた。毎年スイスで行われる世界経済フォーラム(通称ダボス会議)のアジア版だ。ここでもアジア経済統合に向けた枠組みの構築が謳われている。
九〇年以降急激に進められてきた貿易の自由化は、民衆に何をもたらしたのか?「大企業と大国によるアジア統合に異議あり!人々のアジアを足下から創るシンポジウム」(東京・文京区、六月一七日)は、世界の隅々に広がった市場競争社会を民衆の立場から検証し、アジアレベルの課題と運動を話し合うシンポジウムとして対抗的に開催された。
関西では、同シンポジウムに参加するため来日したキンコン・ナリタラクさん(FTAウォッチ)とジョセフ・プルナガンさん(SNR)を京都に迎え、「アジアのFTA何が問題か?交流討論集会」が行われた。
FTAによってタイの小農民は壊滅的とも言える打撃を受けた。フィリピンでは、サービスの自由化により看護師・介護士の海外流出が続き、フィリピン国内の医療体制は危機的状況にあるという。自由化の名の下に世界的に進む富の独占の実態が垣間見える。同集会で明らかにされた「自由貿易」の実態を報告する。(編集部)
貿易拡大と世界の貧困化が同時進行
「貿易の急激な拡大と貧困化が同時に進んでいる」。国際NGO「フォーカス・オン・ザ・グローバルサウス」で活動するジョセフ・プルナガンさん(三五歳)は、まずこうした事実を指摘した。世界貿易は、最近の一〇年で急激に拡大し二〇〇四年時点で約七兆j。一方国連の開発レポートによると、同時期に全世界でホームレス・栄養失調の子ども・絶対的貧困層も増加したという。WTO・ドーハラウンド(二〇〇一年)で謳われた「国際貿易のより平等な分配」は、空手形であった。
プルナガンさん・ナリタラクさんの報告は、貿易の拡大や経済開発が誰のためであり、誰がその利益を得ているのかに移る。
フィリピンは、一九九五年にWTOに加盟したが、政府の約束とは逆に生活水準の低下・失業の増大・小農民の破産が生じた。
タイでは、中国との自由貿易交渉で二〇〇三年一〇月、野菜・果物の関税がゼロとなり、安い中国野菜・果物が猛烈な勢いで押しよせた。価格はタイ産の三分の一という中国野菜の輸入は、関税撤廃から九ヵ月後に一八〇%の増加を示し、タイのニンニク作付け面積は、二万八千ヘクタールから八千fに激減。十万人の農民が経営危機に陥っているという。