[海外] ブラジル/金持ちの世界支配にNO!
釜ヶ崎パトロールの会 金津まさのり
はじめに
六月一五〜一六日、東京都港区で開催された「世界経済フォーラム・東アジア会議」。世界経済フォーラム(WEF/通称:ダボス会議)は、マイクロソフト、GM、ナイキら世界の巨大企業約千社の経営者・研究者・政治家らの私的な集まりで、年一回スイスのダボスで開催されている。一九七一年に「欧州経営フォーラム」として設立され、「いかに利益を多く吸い上げるか」「参加企業同士で利益をいかに分け合うか」を密室で話し合ってきたWEFは、いまや世界経済を牛耳る怪物に成長した。
今回の会議はその東アジア版であり、経済同友会とWEFの共催で行われ、日本・中国・韓国・インド・東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国など二七ヶ国三〇〇人が参加した。同会議の共同議長に名を連ねたのは、中村邦夫・松下電器産業社長、氏家純一・野村ホールディングス会長のほか、ファイザー製薬(アメリカ)、サムスン電子(韓国)、ペトロナス(マレーシア・石油大手)、インフォシス・テクノロジーズ(インド・IT大手)、WPPグループ(イギリス・世界的広告会社)といった、そうそうたる巨大企業の社長やCEO七人だ。二階俊博経産相がパネリストとして加わった。
小泉政権の下で打ち出されたさまざまな大企業優遇策は、WEFの提言する政策と軌を一にするものだ。総理大臣官邸で開催された「WEF・東アジア会議」の総理主催レセプションでシュワブWEF理事長は「日本は総理自身ビジョンを持って構造改革に取り組み成果をあげている。将来の日本経済の継続的成長を祈念します」と小泉「改革」を持ち上げた。
ついでWEFは「日本が競争上の課題を解決するには迅速な改革が必要」とした報告で、「残念なことに完全な改革とは言えない」とし、「グローバル経済における中国とインドの急成長がもたらした問題を解決するには、日本の次期政府がいち早く機会をとらえ、日本および日本産業界、労働力の国際化を迅速に押し進めなければならない」として、雇用契約の流動化や海外労働者への門戸開放を迫っている。出席者の一人である竹中総務大臣は、「日本はここ五年で大きく変わりましたが、十分に変わったといえるでしょうか。答えはノーです。世界は急速に変わりつつあり、一歩先を行く改革が求められています。改革はまだ始まったばかりです」と述べている。
「自由」の名のもとに大企業には国境を越えて労働者・市民から収奪する権利が与えられ、声なき市民には「自己責任」として失業と貧困、野宿と野垂れ死にを押し付ける――「新自由主義グローバリゼーション」に対し、野宿労働者・障がい者・移住労働者ら社会的排除を強いられた「持たざる者」の立場から、抗議行動が呼びかけられた。警察の激しい妨害をはねのけてたたかった抗議行動をレポートする。(編集部)
警察が守るのは民衆ではなく金持ち
集合場所の東京タワー付近では、参加者に数倍する公安刑事・機動隊が大量配備され、私たちの声を力で封殺しようとした。WEF会場のパークタワー方面へと向かおうとしたところ、すぐさま盾を並べて通行を遮断し、押し問答。警察は通さない理由を述べることなく、「検挙してやる!」などと罵声を浴びせながら、私たちを近くの公園へと盾で押しやった。
二〇〇四年に韓国・ソウルでWEF東アジア会議が行われた際、数千人のデモ隊を警察は装甲車を並べて封鎖し、会場へ近づけなかった。規模こそ違え、そのことをまざまざと思い起こさせる光景だった。「国家と警察は民衆を守るのではなく、搾取する者を守る装置だ」と実感した。
午後からは、港区赤坂のブラジル大使館に対する抗議行動が取り組まれた。ブラジルのパラナ州クリチバとサンパウロで暮らす一〇〇〇家族に強制排除の危機が迫っている事態について、フランスの『NO―VOX(声なき者)ネットワーク』が各国の政府関係機関に対する国際抗議行動を呼びかけ、パリ・リスボン(ポルトガル)・東京の仲間がこれに応えたもの。
ブラジルでは現在、貧困によって野宿やスラムでの生活を余儀なくされている家族が多数存在する。サンパウロでは一万人が路上生活を強いられており、全国で不足している住宅の数は一五〇〇万戸にものぼるという。一方で、使われていない土地や空きビルが無数に存在している。こうした状況のなかで、野宿やスラムの住民が空き土地や空きビルに住み、社会保障を要求する闘いが組織されている。