[社会] 日雇い労働者・野宿者を電池のように使い捨てる日本社会
──大阪経済大学 青島元
編集部より
今年二月二七日、「地域・アソシエーション研究所」(大阪府茨木市)の主催で「釜ヶ崎フィールドワーク」が行われた。「釜ヶ崎炊き出しの会」の稲垣浩さんの案内で釜ヶ崎内外を見学し、日雇い労働者と野宿生活者が置かれた状況を知る趣旨で行われたものだが、このフィールドワークに参加した学生・青島元さん(仮名)からの感想が寄せられたので紹介する。 (編集部で一部要約しました)
日雇い労働者や野宿者は「更生」されるべき存在?
今回、釜ヶ崎フィールドワークに参加したのは、この日本社会で進行しているとされる「格差社会」について理解を深めたかったからだ。大学でのゼミの中で、社会的に疎外されているニートへの理解を進めていく内に、いわゆる「勝ち組」「負け組」と称される所得の階層問題の枠は若者に留まらないのではないか、という疑問を抱いたのである。
さてフィールドワーク当日は、参加者一行は「釜ヶ崎炊き出しの会」代表の稲垣浩氏の案内で、四角公園(通称)で行なわれる炊き出しの見学に向かった。
公園では、さほど広くない公園を取り巻くように多くの人が列を作って炊き出しを待っている。大きな寸胴鍋に入った汁物と、おにぎりと串かつ一本のメニューがおよそ三〇〇名もの人々に振舞われていた。
公園を後にし、市立更生相談所へ向かう途中、稲垣氏が一本の電柱の上を見るように言った。そこには監視カメラが設置されていた。このカメラの映像は、すぐ近くにある西成警察署で二四時間体制で監視されているそうだ。現在、釜ヶ崎には一五台の監視カメラが設置されているとのことだが、なぜ他の地域とは異なり、釜ヶ崎には監視カメラが集中的に設置されるのかを考える必要があるだろう。大阪市や警察が、釜ヶ崎を監視対象と見ている事の証明だ。
市立更生相談所は、日雇い労働者を対象に健康診断を行ない、また生活保護等の生活相談を行なっている施設である。中へ入ると、稲垣氏が天井を指差した。天井の一部分が黒い半透明のプラスチックの板で覆われていて、真下に来て覗き込むとカメラがあるのが分かる。来訪者用の隠し監視カメラが設置されているのである。それは二階の待合室にもあった。
二階の待合室には、相談室へ繋がるドアが幾つかあった。そのドアは待合室側からは開けることができない。相談室の机の中央にはエアカーテンがあり、こちら側とあちら側の空気を遮断している。稲垣氏が「釜ヶ崎労働者に対する差別だ」と言うと、職員は「結核の恐れがあるからだ」と答える。
市更相の案内を終えると、稲垣氏は、「日雇い労働者や野宿者は果たして『更生』されるべき存在なのだろうか?」と大阪市の姿勢を批判した。