[情報] 国民国家拒否するラディカルな自治の形成をめざして
地域・アソシエーション研究所 山口協
自治州「沖縄」
今年一月に沖縄を訪れた。そこで私は、地域に根付いたユニークな取り組みを進めている諸団体にお話を伺うことができた。以下では、沖縄自治研究会の活動を紹介したい。
沖縄では「復帰」以前から今に至るまで、折に触れて独立や自立に関する議論が行われてきた。その内容は多岐にわたるが、基本的には沖縄と日本(ヤマト)の歴史的な関係を背景に、民族的な差異を根拠として、日本とは別の政治機構を追求する傾向が強かったと言える。いわばナショナリズムに基づく政治的共同体の形成である。
これに対して、沖縄自治研究会の基本方向は、日本国憲法第九五条に規定された自治体の住民投票に基づく特別法の形成を通じて、自治立法権、自治行政権、自治外交権、自治司法権など最高度の自治権を持った「自治州」としての沖縄を展望するものである。この点について、研究会の世話役的な位置にある琉球大学の島袋純氏は、次のように語る。
「政治を突き動かして政府を構成する原理としては、民族主義というのは最低のものだと思っています。ですから沖縄自治州の案も、あくまで原則は市民自治、住民自治、その延長線上に地域主義や民族的少数派であることを考えるということです。」
近代国民国家に異議を
だが、誤解してはならない。《ナショナリズムを拒絶した自治州の追求》という方向性は、決して微温的なものではなく、まして無条件に日本への同化を意味しはしないのだ。
「僕はこれまでの『国民国家』のシステム自体に大きな疑いを持っていて、歴史的にも、沖縄だけじゃなくて辺境の地域は、国民国家同士の対立の犠牲にされてきた。それを打破するためにも、沖縄が既存の国民国家の中に統合されるんじゃなくて、国民国家を解体するような、あるいは新たな国民国家の役割や定義を提案するような方向も考えていきたい。独立してこれまでのような国民国家をもう一つ作るなら意味ないわけです。」
このように、「同化か独立か」という近代国民国家を前提とした選択肢そのものに異を唱える点では、独立論以上にラディカル(過激)だと言える。