[情報] バイオディーゼル燃料の現状 日本では
──平賀緑「ジャーニー・トゥ・フォーエバー」共同代表
玉石混淆からより良い社会に活かせるかの勝負所
農業政策にからんだ業界団体の後押しでバイオディーゼルが広められた欧米に対して、日本ではいろんな分野での小さな挑戦からバイオディーゼルへの取り組みが始まった。
マスコミでの取り上げ度が抜群に多い東京・墨田区の染谷商店では、一九九三年からバイオディーゼルを作ってきた。もとが廃油回収業者なので原料となる廃油も油再生技術もあり、海外から輸入される安いバージン(未使用)植物油に圧迫された廃油産業での活路をバイオディーゼルに見いだしたと聞く。ちなみに日本ではバイオディーゼルのことを「BDF」という呼称が広まっているが、これは染谷商店が登録している商標である。
琵琶湖の水質保護のために「せっけん運動」に長く取り組んでいた滋賀県では、廃油をせっけんに作り替えても需要が伸び悩みでやはり廃油の新しい活路を求めていたところから、滋賀県環境生活協同組合を母体に「菜の花プロジェクト」が広げられた。菜の花という絵になる華やかさや環境生協の尽力によって、こちらもバイオディーゼルといったら菜の花プロジェクトと思う人も多いくらい全国に広まっている。
もう一つ日本独特な動きは、授産施設や共同作業所での取り組みだろう。しょうがいしゃ施設を取り巻く社会状況が変わり新しい事業を探しているところに、廃食油を集めてバイオディーゼル燃料を作るという取り組みに期待が集まったか、また(確かな証拠はないが)燃料製造機を販売したい人たちがそこにターゲットを絞って売り込んだか。
その他、ガソリンスタンドや工業高校や、各種市民グループや民間企業などなど、いろんな団体が取り組んでいる。
自治体としては、一九九七年からゴミ回収車をバイオディーゼル燃料で走らせ、二〇〇四年には約八億円の巨額を投資して廃食油燃料化施設を建設した京都市が有名だ。ここまで大規模にはできなくても、自治体がらみの取り組みは全国に広がっている。
とにかく「猫も杓子も」と言えるほど、その分野ではバイオディーゼルが珍しくないほど取り組みが広まっている。その割に、身近なところで目にすることは少ないが。