更新日:2006/04/22(土)
[コラム] バリアのない街14/市場経済に漬かる介護現場 遥矢当
有料ホームと病院の対立
「この有料老人ホームは、今まで横並びでやってきた日本の社会福祉が実現できなかった満足のいくサービスを、入居する高齢者の人達に提供できます」
今年の初め、学生生活が終わりに近付いた私は、就職活動を開始した。面接の会場は東京の新宿、高層ビル街の一角。四十代と思しき有料老人ホームの施設長は、飽食の時代に青春時代を送った世代らしく、「介護は豊かさが前提だ」と語る。
翌日、埼玉県の病院で事務長は、「未熟な介護士の集まる有料老人ホームの介護なんて、本物の介護じゃないよ。途中で追い出さないで、最後までを責任を持って看取るのが介護だよ。それができるのは医療なんだよ!」と私に同意を求める。
介護の理想とは、高齢者本人をはじめ周囲の人々も納得のいく、苦痛のない安らかな最期=死を迎えることだろう。病院事務長の気持ちも分かるが、正直私は内心で「お金のない貧乏人は、有料介護どころか医療からも見捨てられ、無力なまま最期を迎える。そんなお金がない人達が圧倒的な数を占める時代がそこまできているのに」と思っていた。こう考えると、面接の結果よりも、これからも介護の世界で働き続けることに対して不安が募った。介護の担い手としての私自身の将来のみならず、この国の介護の将来に対しても。
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