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更新日:2006/04/09(日)

[政治] 「皇室のあり方」を決めるのは主権者だ/山村千恵子

「万世一系」なんて真っ赤な嘘!

近代以前の史書というものは、権力者が、オノレの権力を正当化する目的で書かれたということを踏まえて読まねばならない。帳簿の辻褄は合っていても、偽装・粉飾されていて当然なのだ。私が「血筋は、何度も途絶えている」と書いたのは「直系の血筋が途絶えた」という意味ではなく、事実を下敷きに書いたとして考えても文字通り血の繋がらない新王朝に取って代わられたという意味だ。

応神天皇は神功皇后が石を腰に巻いて出産を遅らせたといいわけしても、仲哀天皇の子であるわけはなく、仲哀の子供たちを殺害して王位を継いだ。二六代継体天皇は、一五代応神天皇の五世孫として福井県から呼び寄せられたことになっているが、畿内に入ってから二〇年間も王位につけなかった。一〇代二〇〇年以上前の血筋など真っ赤な嘘であることを示すために、体を継ぐという諡がつけられた。天武は天智の五歳上の弟とか、数え上げるスペースもないが、「男系継承の原則は一度たりとも途絶えておら」ないというのが建前に過ぎないことはよく知られている。

『もし歴代天皇が仮に「女系」を貫いてきたとしたなら、私は「女系」を支持する。』と言われているが、私はこれを信じない。「男系維持」を叫ぶ方たちと、慣習的な家父長制が崩れ、フェミニズムが台頭して来ることへの危惧を叫ぶ人たちが、ほぼ重なっているからだ。

しかし信じたとしても、それでは長く続いたという以外に、男系天皇の必然性はないと言うことになる。

「伝統だから守らねばならない」というなら、イスラムにおける女性割礼の伝統も守るべきなのか。インドのカースト制度も守るべきなのか。守るべき積極的な意義が語られなければ、伝統には何の説得力もない。

権力者支えてきた天皇制の責任

平安末期からおよそ七〇〇年にわたって、権威だけをもち、権力者は他にいたことをもって「象徴天皇であった歴史が長い」と述べられている。私はこの手の権威は、中国を宗主国とする朝貢外交に始まると考えている。中国皇帝から役職をいただくことによって権威を背景にした権力者の資格を得たのである。志賀島で見つかった金印に刻印された「漢委奴國王」や、倭の五王に与えられた「安東将軍倭国王」「鎮東太将軍」「征東将軍」などの称号が、それを表している。中国皇帝は、日本の国内事情を知った上で彼らを選んだわけではなく、貢物を持って役職の付与を申し出た者を認定したのだ。そして中国皇帝の権威が、称号を受けた者の権力を正当化した。

朝貢や遣唐使を廃止した後も、中国皇帝の権威に代えて、権力者を正当化する権威としての天皇が存在し続けたのだ。権力を持たない「カラ権威」であるから象徴天皇であったというのは誤りだ。むしろ権力と権威を分離することによって、支配のうま味だけを得て、責任をあいまいにする働きをした。

戦後の日本は、江戸期までと違って、一握りの権力者に支配される国ではなく、国民主権の国になったはずだ。権力の主体が国民となり、天皇が人間宣言をした時点で、天皇は女系だ男系だという次元を超え、伝統は絶たれ、画期的な変化を遂げたのだ。

言われるとおり憲法第一条の「天皇の地位は国民の総意によって決まるという条文を堂々と前面に出して」考えよう。我々主権者は、天皇の「権威」を必要としているのか。被災地の人々は、男系血統書つきの天皇の差し伸べる手には癒しを感じるが、庶民の血をひく皇后の手では癒されないのか。

この国の主権者は私たちのはず

象徴天皇制において、皇族は主権者たる国民ではない。したがって天皇の地位についても、国民の総意は国会で話し合われるべきであって、皇族には発言権はない。現天皇や皇太子などは、憲法上の自分たちの地位についてよくわきまえている。秋篠宮は「公務は受け身」ともいった。それにひきかえ、三笠宮ェ仁が国会の議論に影響を与える立場を顧みず見解を発表したが、その時点で彼は皇族としての資格を失った、と私は思う。旧宮家の子孫である竹田恒泰氏は、発言したことによって皇族復帰の資質乏しさを見せてしまった。

菊のカーテン越しとはいえ、現在は皇室の動向が漏れ聞こえる世の中だ。側室制度を復活させて、正妻と側室の葛藤を覗き見ながら、敬愛の情など抱き続けられないだろう。それより、今でさえ直系皇族は恋愛チャンスが少なく婚期が遅れがちなのに、国民に敬愛されるほどの女性が喜んで妻になるだろうか?まして側室になるだろうか?そして旧宮家を皇族復帰させて国税の負担を増やすことを望むだろうか?

ともかく、憲法に決められているのは世襲ということだけだ。後のことは主権者である国民が決める。

伝統は往々にして弱者を踏みつけることによって維持される。伝統だ男系だと声高に叫ぶ人たちは、天皇の権威を利用して「国体という権力」が国民を支配するシステムを着々と構築してきている。「個」である我々自身が、天皇の地位をも決めることができる権力者であることの責任と自覚をもって、皇室典範を改定する(あるいはしない)という権力を行使してみよう。

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