[情報] バイオマスにもピンからキリまで2
はじめて
手作り企画「ジャーニー・トゥ・フォーエバー」の共同代表・平賀緑さんによる連載第3回。 てんぷら油からつくったバイオディーゼル燃料で車が走るーバイオマスとは、再生可能な生物由来の資源のこと。前回は、「そもそもバイオマスって?」という基本からはじめ、「環境」「エコ」のかけ声のもとに行政や企業からもバイオマスが注目される一方で、その影にある矛盾について触れていただきました。今回、さらに掘り下げていきます。
原産地の地域社会も自然環境も持続可能に発展できること
バイオマス(生物由来の有機性資源)にはその原産地がある。原産地があるということは、そこで生活している人と社会と自然環境があるということ。そのためバイオマスを評価するとき、その原産地の地域社会も自然環境も持続可能に発展できるものであることが大きなポイントになる。
たとえば同じバイオディーゼルでも、個人が地域の廃油から自家用に手づくりした燃料と、アグリビジネスが大規模に遺伝子組み換え大豆を栽培し、農薬も化学肥料もたっぷり、大型農機具を稼働するため石油燃料をバンバン燃やし、農場労働者をレイオフしたり劣悪な農業労働でこき使ったりした原料から作った燃料とでは、同じバイオディーゼルといえども環境に対する影響も人間に対する影響も月とすっぽんであることは一目瞭然だろう。
実際の世界では残念ながら後者に流れるパターンが多い。前号で少し紹介した木材についてもそうだが、ガソリンの代替燃料として注目されているバイオエタノールに関しても、地球の裏側のブラジルから輸入する方向で国も企業も動いている。
もともとサトウキビを原料とするバイオエタノールの世界最大生産国だったブラジルは、バイオ燃料への需要拡大に乗じようと国を挙げて動いている。すでに二〇〇三年に約六億五〇〇〇万リットルだったブラジルのエタノール輸出量は、〇四年には過去最高の二四億リットルに達した。今年一月には日本向けに年間一八億リットルを輸出する契約が結ばれたそうだ。それに対して日本も〇四年九月には小泉首相がブラジルを訪問し、経済産業省の後押しも受けながら企業も動いている。
一方、「原産地」では何が起こっているか。ブラジルの邦字新聞「ニッケイ新聞」がその一端を紹介している。
「世界の注目を浴びるエタノールの最前線、さとうきびの刈り入れ季節労働者の過労死が問題になっている。リベイロン・プレット地方五郡には、北東伯から来た労働者多数がさとうきび畑で就労する。聖州だけで二一万人いる。豪雨の降り注ぐ中、誰も休憩せずズブ濡れで働いている。就労開始と終了時間は、打ち上げ花火で知らせる。季節労働は、九カ月にわたる出来高給。苦情や 抗議は一切受け付けない。農村労働者として登録されるが、農村労働法は有名無実。朝は午前三時集合、トラックに乗せられてさとうきび畑へ到着。午前三時に遅れたら、アブレになる。毒蛇は日常茶飯事、飲料水は取りに行く時間がないので節約。トイレは男女とも地面に穴を掘り、薬品で即時乾燥させる。(www.nikkeyshimbun.com.br 一月一一日)
日本国内には一〇〇万ヘクタールを超える休耕がある。ここでは複雑な日本の農業問題に触れないが、バイオエタノール燃料を日本国内で生産することは充分可能だと思う。経済産業省も当面はブラジルから輸入するけど、日本国内でも家屋の廃材などからエタノールをつくる技術の研究などもあるとして、ゆくゆくは国内産に切り替える計画だと話してはいる。これが単なるリップサービスに終わらないよう、両国民の監視が必要だ。