[コラム] 「米軍の悪夢」を実現させるな
在日米軍再編―強硬姿勢強めるアメリカ側
米軍の変革・再編(トランスフォーメーション)をめぐる日米間協議の最終報告期限(今年三月末予定)を間近に控え、アメリカ側の強硬な要求が相次いで報じられている。
在沖縄・海兵隊のグアム移転に関して、その費用負担要求は法外なものにまでエスカレートしている。米国側は、総額数千億円になろうと予想される米国内の基地建設費用までをも日本側に求めている。日本政府が日本国内の基地移転先住民からの合意を取り付けていないことにも、苛立ちを隠そうとしない。一方で、もともと米本土防衛を目的に日本配備を計画した地対空ミサイルを、「東京・首都圏防衛にも運用できるよう検討する」との、毒にも薬にもならないリップサービスをして圧力を強めている。
昨年の一〇月に、この日米協議の「中間報告」が出され、その中で在日米軍内の部隊再編成に伴う新たな移転先が示された。該当する各地の地方自治体はその内容について詳しい情報公開を政府に求め続けてきているが、政府からは何の回答もないままここまで来てしまった。
政府は安全保障上の機密事項にかかわる問題として情報公開を拒んでいるが、理由はそれだけではなさそうだ。というのも、在日米軍の枠に収まらない地球規模の米軍の再編計画が、きわめて流動的だからだ。つまり、詳しい情報公開といっても、答えようにも答えられない事情がある。欧州に展開する米軍の再編計画も思うようには進んでおらず、欧州から米国内に引き上げ、さらにアジアに再展開するための米国内を含めた予算措置も決まっていない。いわば詳細な計画無しの場当たり的な見切り発車だ。だからこそ余計に、日本政府に法外な要求を突きつけてきているのが日米交渉の現状と思われる。
徹頭徹尾、利己的で、「日本」などどこにもない
ただ、予算的な裏付けを欠くといっても、米軍が夢に望んでいる再編の輪郭だけははっきりしている。
「中間報告」は、@「テロと弾道ミサイルの脅威」を焦点化、Aそのために情報収集能力と高速輸送艦等を運用する兵站能力の飛躍的向上を日本の役割と位置づけ、Bそれを指揮するための「陸海空三軍統合任務を担う陸軍作戦司令部(UEX)」を日本(神奈川県座間)に置くことを明らかにした。
特徴的なことは、従来の核抑止を基調とした「安全保障」戦略から様変わりした点だ。米国の「本土防衛」を至上命題に置き、少しでも「脅威」を感じたら、なるべく米本土から遠いところで先制攻撃を掛けて叩きつぶす。徹頭徹尾、利己的で攻撃的な「戦略」だ。固定的な基地は逆に狙われやすいのでなるべく分散し、いっそインド洋など「敵」の目の前の洋上をそのまま基地にする。具体的には「強襲軍事作戦を敢行する陸上部から四〇〜一六〇`の沖合に、いつでも十日以内に作戦基地を置ける能力」としている。米軍はこれを「シー・ベーシング」と言っている。
しかもこの海上基地から先制攻撃を行う部隊は、米軍単独ではないかもしれない。