更新日:2005/12/22(木)
[コラム] バリアのない街13 レクリエーションは何のため?
──遥矢当(はやと)
「こんな歌知らんもん!私なぁ昭和五八(一九八三)年生まれやから!」「あんたは知らんでもええから、(カラオケの)曲かけてな」女性介護士と利用者の会話を聞いて、私は振り返った。流れてきたメロディは「若く明るい歌声に〜」で始まる、有名な「青い山脈」だった。兵庫県伊丹市の老人保健施設での話だ。私はリハビリ室でOT(作業療法士)に付き、機能訓練業務に当たっていた。隣にあるデイケア室から歌声が聞こえてくる午後ののどかな一時は、彼女のその一言で興ざめになった。私もまだ若い部類に入る世代だが、思わず「えっ・・・。これぐらいは知っているでしょう。普通!」とつぶやいてしまった。彼女は、目の前にいる女性利用者に続けた。「専門学校の時にもなぁ、こんな歌習わんかったもん 」私はこれを聞いてたしなめに行こうと思ったが、思いとどまった。もしかすると、皆が知っているはずだと思っている「青い山脈」の歌を、高齢者の施設でも歌わない日が近付いているかもしれない、と思ったからだ。施設でのレクリエーションは、入居する高齢者にとって大切な「生きがい」である。ところが最近、彼女のように未熟な職員によって「生きがい」が奪われ始めているのだ。
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