更新日:2005/07/20(水)
[コラム] キューバ訪問記2「我々は競争社会を目指さない」水野阿修羅
キューバで一番びっくりしたこと。それは、ハバナでのバスの乗り方だ。
キューバは暑い。バス停にはいっぱいの人がいる。しかし行列はない。それなのに、バスが来ると、何人もの人が、すっと列をつくり、押しあいもせず、割り込みもなく、整然と乗っていくではないか。
びっくりした。そして思い出した。ピノス島からハバナに行くのにフェリーを利用することにした私は、友人とチケットを買いに行った。「なかなかチケットを買えないから、早い目に買いに行こう」と言う。乗る予定の五日も前に、町のチケット売り場にいくと、一〇人ほどの人がたむろしている。行列などはない。友人のエドワルドは、そこで「最後の人は誰ですか?」とたずねる。と、一人の人が手を上げた。お互い顔を見合せる。私たちより後に来た人も、同じように声をかけ順番を確認していた。
つまりハバナでも同じことをしていたのだ。村のバス停では人もいないので、そんなことはなかったのだが、見ず知らずの人との間には、社会のルールがきちんとあって、みんながそれを守っている。
カストロは言う。「わが国は競争社会を目指さない。困難を分かち合う。金のある人、力のある人だけがいい目をする社会にはしたくない」と。
ソ連崩壊後、一切の援助がなくなり、輸入に頼っていた石油も食料も、ほとんど入らなくなったという。
それを乗り切るため、カストロは助け合いの精神を信じた。自分たちの失敗や、弱さを隠すのではなく、正直に国民に報告し、「みんなで助け合ってこの国難を乗り切ろう」と提案したという。
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