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[コラム] 「NHKを市民の手に！」メディアの双方向性を求める
──山村千恵子

『朝日とＮＨＫ』の対決ではない、右派政治家とメディアの対決である。放映された『ＥＴＶ二〇〇一―女性国際戦犯法廷―問われる戦時性暴力』には、いかに土壇場になって切り張りしたか、素人にでも分かるぶざまな編集あとがある。長井ＣＰの涙。今までに内部告発したものは、全て左遷されている。ＮＨＫの体質は、海老ジョンイルの独裁だ」

パネラー川崎泰資氏の発言は、ＮＨＫのＯＢであるだけに、説得力があります。聞きながら、フムフムそうだろう。強烈で的確な言葉に、一〇〇％に近く頷きました。それでいて服の方に体を合わせねばならないような、違和感がありました。

そこに、もうひとりのパネラー松浦さと子さんです。『左遷される』というのが『地方へ飛ばされる』ということなら、異議がある。地方には固有の偏りがあるが、権力から遠い人の偏りこそ、発信されなければならない。韓国ＫＢＳに、二〇〇一年『開かれたチャンネル』と題する市民制作の映像の放送が始まった。その第一回は韓国女性団体連合が制作した『戸主制廃止・平等な家族への道』という番組だった。論議が深まり、戸主制がなくなることになった」

そうそう、これこそ身にぴったり合います。

パネラー発言が一巡すると、会場から手が上がりました。在日二世の女性です。「海老ジョンイルというあだ名を聞くたびに心が痛い。子どもの友だちの金君は、ジョンイルと呼ばれて辛い思いをしている。日本の歴史にも独裁者はいただろうに、なぜその名ではなく、隣国の独裁者の名を使わねばならないのか」

そうなのです。日本人には痛快な、海老ジョンイルというあだ名にも、苦痛を感じる人がいるのです。それを面白おかしく流通させたマスコミの偏りは、どこからも問題にされませんでした。救いは、命名者である川崎氏が彼女の発言に頷き、二度とそのあだ名を使わなかったことです。

権力を批判しながら、地方に対しては中央が、女性に対しては男性が、在日に対しては日本人が、左利きに対しては右利きが、小さな権力になっています。権力側のお仕着せに違和感がある時、権力に対峙する側が作るメディアが必要になります。

ネット配信の韓国『オーマイニュース』は、大統領を作りました。日本にも『ＪＡＮＪＡＮ』がありますが、いかにもマイナーです。既存大メディアが持つ多方面の既得権を使って「双方向性」を作り出そうというライブドアの試みにも、期待しています。

韓国では、〇〇年に放送法が変わり、市民が制作した番組を放送する義務を放送局に負わせました。韓国放送公社（ＫＢＳ）は、「視聴者が直接制作した番組を編成しなければならない」（放送法六九条）とされ、有線放送と衛星放送も、「視聴者が自ら制作した番組の放送を要請した場合には、特別な理由がない限りこれを放送しなければならない」（七〇条）と定められました。

ＮＨＫのいう「開かれたチャンネル」は専門家集団が制作する「視聴者参加型」で、これはマヤカシです。ＮＨＫは機材や技術だけを提供して、視聴者側が、テレビの作り手になるのです。『ＥＴＶ二〇〇一』をＮＨＫに作らせるのではなく、ＶＡＷＷＮＥＴ自身が作って、放映させるのです。

受信料には発信権を含ませましょう。受信料拒否という小さな権利行使が、意外に大きい力を持っていることを知ったのですから、一方的垂れ流しにストップをかけましょう。