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更新日:2005/03/19(土)

[コラム] ハングル検定五級を目指して
自らを引き裂く言葉こそがやつらを打ち抜くのだ
──かねはぎあつし

一一月一四、わたしはハングル検定五級を受けた。そして一二月一八日、合格通知を手にした。他民族の国家を攻撃して、その文化は横取りする。

これまで何度も繰り返された悪質な手法が、今や対共和国攻撃キャンペーンの中でついに、人が文化になった。ヨン様さわぎ、『韓流』ブーム、何も映画館で並んで観なくてもテレビのCMや、在日韓国人・在日朝鮮人に心を寄せているらしいタレントの、お里が知れちゃうコメントで内容がわかる『血と骨』等に影響されたものではない。

むしろ、そのような光に気持ち悪くなる。スポットライトとサーチライトの光がめまぐるしく動く。もっとも暗い光が、もっとも明るい光だったことをわたしたちは忘れていないか。本当は信じていない言葉と、何を言っているのかわからない声が響き続ける。だが不協和音を遮り、その手暗がりの中にわたしたちがつなぐ手と言葉と声を探さなければならないだろう。

友達でいるため韓国語学習を決意

九六年、わたしは釜ヶ崎で在日韓国人の若者の給料不払い相談を受けた。電話で親父にかみついても全然払う気がない。もうどうにでもなれ!と『その辺にいた人たち争議団』を結成して、労働争議を斗った。その後、わたしはこの若者と釜ヶ崎の労働センターから仕事に行ったり、酒を呑んだりするようになった。それまで、運動をしている在日の若者たちと交流をしていたわたしたちにとって、運動を全然していない彼の言動はどう答えていいのか戸惑ってしまうこともあった。

彼を見ながら「大阪弁がうまくしゃべれるこいつ・大阪弁がしゃべれないわし」、韓国の出稼ぎ労働者を前にして「韓国語がしゃべれないこいつ・韓国語のしゃべれないわし」。普段は日本名を名乗っていても、家に電話をかければ母親に本名で呼ばれる。…あんたダレね?なんで韓国語しゃべれんのん?…なんでここにおるんね?とわたしは思った。いま考えればずいぶんな話だ。

なんでここにおるんね?と言いたいのは彼のほうではなかったか。戦後五十年じゃ!いつまで頭を下げるんじゃ!と言おうと、こいつは今も戦争を引きずっとるじゃないか。百年からの歴史をこいつは背負って歩いとるじゃないか。わしが友だちでいようと思うんなら、こいつが背負っとるもんを少しは持ってもええんじゃない?日本が暴力で押しつけたその結果としての日本語じゃなくて、こいつが本当にしゃべるはずだった韓国語を少しでもしゃべろうやと思った。

積んでも崩れる学習

さっそく電信柱にぶらさがっているハングル教室に電話をかけたが「日本人はちょっと…」と言われ、テキストだけが送られてくる。見たところでわかりもしない。三日坊主になり、テキストだけが増えていく。

二〇〇〇年からは、NHKのテキストを用意した。テープを使っての学習である。現場の休憩時間、移動中、飯場、斗争の合間、けんかして救急車で運ばれたベットの上…。とにかく学習を続けた。にも関わらず、なんにも覚えていないことに気づく。

わたしは睡眠障害で、過眠症だとわかった。積んでも積んでも崩れるしかない学習が続く。たった三週間のテキストが、一年たっても終わらない。わたしより韓国語がうまく話せる人をみては、いつになったらあんなふうに話せるんじゃろうか…と思い、何もかもが困難なところで一人で学習する自分に目を奪われそうになる。

だが、そのような自分の有りようをすぐに殺す。人と比べて自分の位置を確かめ、その姿に目を奪われることしかできないのであれば一体、どこにこの友人とつながる通路があるのだろうか。何かの知識の向上を目指すもので学習をするだけなら、その眼差しがわたしをはじいた者たちの眼差しと、どれだけ違うというのか。 同時代を生きる者の背負っている物を、少しでも持ちたいと始めた学習は、同時にこれまでわたしをはじき、またわたしの手で他者をはじくばかりかわたしさえもはじくことで奪われ/つぶしたものを取り返すことだと気づく。

立ち塞がる氷壁を自由な水へ

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