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更新日:2005/02/18(金)

[海外] パレスチナ/突然襲い掛かってきたアパルトヘイト壁
──ハニア・バタル  (ジャーナリスト。パレスチナ青少年協会「ピャラータ」会長。エルサレム在住) 翻訳/脇浜義明

壁が初めて問題になったとき、正直言ってあまり真剣じゃなかった。でも私が働き、生活しているアッラム地区で壁建設が始まってからは、現実として私の生活にのしかかってきた。窓の外を見るたびに壁がグロテスクな恐ろしい怪物のように見える。夜一人で壁の横を車で走っていると、壁が大蛇のように永遠に長く曲がりくねって続き、私を呑み込もうと冷たい目で睨んでいるように感じる。

壁とチェックポイントが私の生活から多くのものを奪った。私は、親・兄弟姉妹もいれば、仕事もあり、友人もいる社会的存在だ。チェックポイントがそういうものから私たちを隔離してきた。その上壁で追い討ち。隔離ということは、人生観や人との繋がりや世界との関係に計り知れないマイナス影響を与えるのだ。

私たちはエルサレム市民で、(訳注:エルサレム在住のパレスチナ人は「ブルーIDカード」で永住権を与えられ、国政選挙とパスポートを除いて、イスラエル人とほぼ同じ市民的権利・義務をもつ)イスラエルの医療保険の適用を受ける。しかしチェックポイントと壁のためイスラエルの病院へ自由に行けない。二〜三年前、父が病気になってエルサレムのハダッサ地区の病院へ通わねばならなかった。出かけるたびに、チェックポイントを無事通過できるか心配だ。帰りも心配で、夕刻チェックポイントが封鎖されるまでに着かないと、寒い冬の一夜を車中で過ごさなければならない。危篤状態でも長時間待たされ、次に車や身体検査で長時間、さらにいやらしい尋問で長時間。実際、父が死んだのは、チェックポイントでの救急車の中だった。

どこへ出かけるにもチェックポイントがあり、壁があるので、何をするにも気が重たい。私の誕生日のお祝いも、普通ならみんな集まってご馳走を食べ歓談するのがアラブ人の慣わしなのだが、姉も妹も甥もいとこも壁やチェックポイントで来れなかった。電話お祝いでお終い。パレスチナ人の大家族制が崩壊寸前だ。

若い世代への希望

私たちの青少年協会「ピャラータ」も、壁のために活動が難しくなった。私たちが、一九九九年にこの青少年活動を始めた発祥の地・ヘブロンは、今では壁のために連絡不能だ。

私はプレス・カードがあるので、ガザへ入ることができる。オッサマは、「ピャラータ」ガザ支部のメンバーだが、私を見ると泣き出して、「仲間と会いたい。たった一日だけでよい、ぼくがラマラに行ける許可を取ってくれ」と、懇願された。ガザは陸の孤島で、隔離の辛さを最もひどく感じているところだ。

イスラエルの妨害にめげずに協会の活動を続けている。チェックポイントや壁で分離されているが故に、人間の結びつきを作る協会の活動が絶対必要だと思うからだ。

ナブルスの子どもたちは、朝四時に出て私たちの行事に参加するために、チェックポイントの長い行列を経てやってくる。滞在中に、ナブルスかあるいは途中の町が封鎖されたりすると、彼らはこちらで泊まらなければならない。

壁はパレスチナ人の間にマイナスの人間関係を作り出している。「あいつは俺よりも自由そうだ、苦しみも少なそうだ」と、お互い猜疑心の目で見合うようになる。特に成人にその傾向が顕著で、まるで魂をなくしたゾンビみたいに空ろな目をしている。その点若い世代は元気で、まだ希望を捨てていない。新しい出発口を探している。

でも、こういう閉塞状況がずっと続くと、彼らもいつまで元気でいられるか疑問だ。特にイスラエル人に対して壁が及ぼす影響だ。イスラエル人は、壁が自爆攻撃を防ぐという神話を信じているかもしれないが、短期的には数人の命を救う効果があるとしても、長期的にはかえって危険。両者にとって破壊的な影響を及ぼすだろう。壁の中と外の住人はますますお互いを知らなくなり、恐れあい、憎しみ合うようになる。

挑戦する自由

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