[海外] パレスチナ/ハマス独占インタビュー「我々はパレスチナの団結のために大統領選をボイコットした」
──ハマス西岸地区総責任者 ハッサン・ユセフ氏
「テロ」は犯罪である
編:ハマスは大統領選挙のボイコットを決めましたが、その理由は? ハッサン:実は、アラファト氏が逝去した直後、ハマスは、パレスチナ内部の情況を再編する為に、パレスチナ統一指導部の建設を提案しました。しかし、その提案は、あるパレスチナ勢力(ファタハ:編注)から一方的に拒否されたのです。彼らは、他の人々の意見や希望など、全てを自分たちだけで実行できる、と言うのです。
他にも問題がありました。もし、私たちハマスが大統領選挙に勝ったら、パレスチナ自治政府の再編や和平交渉の方針変更などを提案することになります。これは、自治政府に大問題をもたらすことになるわけです。そこでハマスは、内部対立を避け、パレスチナ民衆の利益を守る為に、自分たちの権利行使を制限したのです。
編:ハマスは、実際には医療活動と病院や社会福祉活動を活発に行っています。しかし、世界や日本ではそれが良く知られていないし、マスメデイアによって「テロ組織だ」と言われています。そのことに、どう答えますか?
ハ:ハマスは多くの活動分野を持っています。日常的な、社会的、教育的、福祉的な活動分野などです。「テロ」は犯罪です。もしハマスがテロリスト組織なら、人々は決してハマスを支持しないでしょう。
ところが、ハマスは民衆に支持されているし、特にインテリ層の中で増大していています。
ハマスでは、多くのソーシャルワーカーが働き、幾つもの教育財団やスポーツ財団を運営しています。財政は、全てガラス張りです。パレスチナ自治政府ができる前の占領下でも、ハマス財団へ寄せられる募金はいつも公開されたものでした。この時期、政府になる勢力はハマス財団の募金動向を調査し、支出の追求調査もしてきたのです。
私たちは、自治政府だけでなく、いかなる国の政府でも、ハマス財団の運営と基金の支出調査を歓迎します。今まで、ハマスには、基金の不正使用問題は一度も起こったことがありません。そうした活動が、ハマスと、ハマス活動家への信頼を大きくしています。
編:パレスチナ自治政府は対イスラエル武装闘争を禁止していますが・・・。
ハ:ハマスは、何度も、自爆攻撃やロケット攻撃などの武装闘争を中止しました。しかしアブ・マーゼン氏(現PLO議長のアッバース氏)がパレスチナ首相に就任していた時も、ハマスの善意の停戦に対してイスラエル側は、虐殺や暗殺、処刑、侵攻、そして人間的な尊厳への侮蔑行動を一切止めませんでした。
つまり、たとえ私たちが武装闘争を中止しても、イスラエルは虐待や占領行為を一切停止しないのです。イスラエルはパレスチナ人への占領行動を続けたし、国際社会はその実情を見物していただけです。ハマスが善意の停戦中に、世界―USA、EU、ロシア、中国、日本政府―は、イスラエルが応えるように圧力をかけるべきでした。
侵略と占領が終わり、囚われ人が解放されるならば、ハマスは決して流される血を見たいとは思いません。
「今」しかない
編:自治政府の再編過程をどう見ていますか?
ハ:今、諸外国の外交訪問団がパレスチナを訪れています。しかし、それはパレスチナの民衆に何らの解決や発展ももたらしません。私たちが望んでいるのは、パレスチナ問題の根本的解決に責任を持とうとする人々です。
世界の人々は、今もパレスチナの民衆に襲い掛かっている虐殺、強硬な占領政策による締め付け、パレスチナ民衆の更なる被害状況を見聞きしているだけじゃないですか。今インタビューを受けているこの瞬間にも、イスラエル軍が五人も虐殺した、というニュースが入りました。
そうなんです。私はイスラエルに虐殺を止めさせる時は、今を置いてない、と言いたい。
問題は、私たちパレスチナの民衆の側にあるのではない。ハマスや、パレスチナの他の組織に問題があるのではない。イスラエルの占領と侵略行動の継続にこそ問題があるのです。
私たちは、自衛権を行使しているだけに過ぎないのだから。
私たちは、日本、EUなどの国々によるパレスチナ民衆への支援をとても感謝しています。そして、この支援が、今後も私たちの国のインフラ建設に向けて続けられることを願っている。そして、あなた方にお願いしたいのは、どうかイスラエルの暴虐な占領を止めさせる為に圧力をかけて欲しいと言うことです。
編:イラクへの侵略をどう思いますか?
ハ:今や米国政府は、何を行い、アラブやイスラム世界との関係にどんな影響をもたらしたのか?如何なる世界を作り出したのか?その見直しを問われるでしょう。
米国は、今でも独善的な決定を行い、単独主義を貫こうとしています。米国は全てを独占し、他国に無理難題を突きつけ、幾つかの国々を支配しています。
私たちは知っています。世界には多くの国や多くの民族があり、多くの世界観があることを。そして多くの国々と人々は、米国政府の政策から被害を被っていることを。
そういう人々は、米国のイラク攻撃を見つめてきました。それは、イラクへの文字通りの侵略であり、恐るべき占領だったのです。だから、全ての国々は、米国の攻撃に寄与するあらゆる行動を止めるべきです。
サッダム政権は崩壊したので、米国軍と同盟軍がイラクに駐留する意味は失われています。彼らは即刻イラクから撤退し、イラクの民衆が自分で自分の将来を決定するままに任せるべきです。
イラクの民衆に、彼ら自身による選挙を保障し、自分たちの実情改善に役立つ政府の選択をさせるべきなのです。
その為にも、まず第一に、占領軍はイラク領土から撤退すべきです。
米国と米国のイラク占領に加担した国々は、アラブとイスラムの民衆、そして、世界の解放された考えの人々から失望されてしまっています。彼らは、とにかく急いでイラクから撤退すべきです。(以上)