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更新日:2005/1/4(火)

[コラム] 北朝鮮の民衆と日本の拉致被害者 イラクの民衆と派兵された自衛隊
──阿部真澄

去る一二月九日、自衛隊のイラク駐留の一年間延長が閣議決定された。使い古された言い方だけど、「やっぱり」としか言いようがない。

派遣前の反対運動と、今年の運動を比べてみても、明らかに沈静化している。この一年で、のべ五人の日本人が殺害されているというのに、本国は今なお「ヨン様」人気に沸き立っているし、ニュース番組は相変わらずヒステリックな編集でもって北朝鮮関連の話題を報じている始末だ。同じ日本人を殺されたというのに、右翼の連中ですら騒ぎ出さない。意図的にそうしているかどうかは知らないが、ここまで来ると不気味なものを感じる。イラクで消え続ける命は軽くて、北朝鮮で消えゆく命は重いのか?いや、多分そうじゃない。事実、怒り心頭の「拉致被害者家族会」は、声高に北に対する経済制裁を求めている。そして、「北朝鮮の罪なき一般人を餓死させてください」と臆面もなく言ってのけるのだ。僕にはどうしても納得がいかない。

同じように拉致に遭ったあげく殺された香田さんには、北朝鮮拉致被害者ほどの救出へ向けた取り組みが為されたかどうか?イラクのファルージャで、米軍による空爆の犠牲になった人々に対してはどうだったのか?テレビで頻繁に報道されるからといって、人間の命に軽重があっていいはずがない。子どもでも解るように理屈なのに、大勢の日本人は今日も一方的な被害者意識に侵されて訳が解らなくなっている。

自衛隊を治安の「比較的安定している」場所へ送り込む期限を延長する閣議決定の一二月九日。新聞各紙の一面は「渡された遺骨は別人」で埋め尽くされていた。まるで示し合わせたかのように、一糸乱れぬ整列振りだったのを覚えている。「また、北関連報道を隠れ蓑にしたのか」──そんな気分だった。

何度も言うけれど、拉致された被害者も、サマワ住民を誤射するかもしれない自衛隊も、命の重みにまったく差異はないはずだ。

北朝鮮への「経済制裁」は国家レベルの集団殺戮だ

今年も、復興への希望を電球に託す「神戸ルミナリエ」の季節がやって来た。僕個人はルミナリエに対しては少々否定的だが(厳密に言えば、一般家庭のイルミネーション類だけど)、行事としてすごく大切なものだと思う。後ろを振り返るということだけではなく、復興への前向きな姿勢が見えるからだ。でも北朝鮮報道は、やたらと攻撃的なだけで、前進しようという気持ちが感じられない。これは僕だけだろうか?

イラク復興と人道支援という錦の御旗を掲げて現地へと赴く「自衛」隊。一説によれば、元・防衛庁副長官が「皇国ノ荒廃ハ、コノ一戦ニアリ」と、イラクへの出陣式において叫んだらしい。後退ここに極まれり、と題して論文の一つでも書きたくなる言葉だけど、二一世紀を生きる日本人の言葉なのだ。

まったく別人の遺骨を公の場で偽って提供するのだから、本当に金正日政権は困った連中だけど、だからといって「経済制裁で報復しよう」というのは、ほとんど国家レベルでの集団殺戮に等しい。どこかの国のせいで、愛する家族が目の前で餓死するのを許せるはずがない。これは世界共通の事だろう。だったら、経済制裁などという選択肢を取り上げること自体が間違いのはずだ。ただでさえ、イラク戦争をめぐる日本の態度がアラブ社会の反発を招く、という失敗を犯しているのに、北朝鮮に対して経済制裁を行えば、日本はアジアからも孤立しかねない。

僕らは、考えなければいけない。同じ世界で生きている人間の命の意味を。

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