[海外] 米大統領選を終えて/見捨てられた選挙民と復権への指導
大統領選後 超党派の公聴会傍聴記──イリノイ州・アーリントン・ハイツ市 宮原文隆
「投票権」は本当に保証されたのか?
選挙の勝敗以前の争点として、投票権の保証を希求する人々がいます。
一一月二日の米国大統領選挙をモニターした国際監視団・OSCE(欧州安全保障協力機構)は、一一ページに及ぶ報告書を作成しました。報告書は、「選挙は、一九九〇年のコペンハーゲン文書により合意された条件に大部分は合致していた」とし、「永い民主政体の伝統を反映した環境で行われた」と述べています。しかし、「数々の重要な問題が注意を呼び起こした」とも付け加えています。
「選挙当日の発見」の章では、「投票所の長い列、長引く待ち時間は、ある人々の選挙参加を妨げたようだ」とあります。どのような選挙への参加妨害であったのか?
答えは、一一月一三日、オハイオ州コロンバス市で開かれた超党派の「投票の不序・抑圧についての公聴会」(四つのNPOによる共催)にありました。
会場のニュー・フェイス・バプティスト教会には、三〇〇人ほどの聴衆が集まりました。三二人の市民が、市議会議員・法律家・NPO代表者・牧師・自由党の代表者・民主党下院議員の弁護士等の公聴人の前で、自らの体験を証言し、宣誓書に署名していきました。
足りない投票機 上増しされる得票数
「アフリカ系アメリカ人が圧倒的である選挙区一Aと五Gのヒルマン小学校の投票所では、痛ましいほどに投票機が十分ではありませんでした。有権者一〇〇人当たり投票機一台が標準と聞いていましたが、有権者登録数は一四四〇人に対し、投票機は六台でした。長い列を待たなければならず、多くの人々が諦めて立ち去りました。投票機の不足により、ヤングタウン市だけでも、八〇〇〇人のアフリカ系アメリカ人が投票できなかったと見ています。それは、ケリー候補への七〇〇〇票が失われたことを意味するでしょう」(ウエナー・ラング/ 牧師/ヤングタウン市)
「この台帳(ペリイ郡の選挙人名簿台帳)には三六〇人の署名があります。この選挙区では、三三人の不在投票がありました。従って、合計三九三票になるはずです。しかし、選挙管理委員会の発表は、それよりも九六票超過しています」(ジョー・ポピッチ/ケリー支持者)
投票することが不可能になった
私が統轄審査員である選挙区二五Bは、住民の九五%以上が黒人です。一五〇〇人の登録がありましが、投票機は三台でした。投票所に来た人々からは、過去には、投票機は五台から六台あったと聞きました。誰かがビデオ撮影するに及んで、選挙管理委員会は、四台目を送ってきましたが、人々の列は短くならず、七〇〇票弱の結果で終わりました。仕事に行かなければならない人々、家にいる子どもや老人の面倒をみなければならない人にとって、投票することが不可能となる明白な事例です」(キャロル・シェルトン/コロンバス・メトロポリタン図書館)
追い返された人々 待ち続けた人々
「コロンバス・オールタネイティブ高校では、朝の六時三〇分から八時三〇分の間、全ての投票機が故障していました。選挙管理委員は、その間に投票に来た人々を追い返しました。」(エイザ・ジェイン・シュナイダー/フランクリン郡/ムーブ・オン・ボランティア)
「ケンヨン・カレッジの学生とガンムビエ市の住民は、雨の降る戸外から暑い室内運動場へと混雑した狭い列に並び、極度に不快な状態のなかで、一〇時間から一二時間立ち通しでなければなりませんでした。この結果、ある者は選挙権を奪われた形になりました。投票することの重要性を絶え間なく言われ続けてきた若者たちが、他のコミットメントを持ち、そして一二時間の列を我慢しなければならないが故に、投票を放棄するしかなかった状況は、(民主主義にとって)明らかに不名誉なことです」(マット・シーゲル/ケンヨン・カレッジ学生)