[コラム] 過密空域に乱気流──曲芸飛行強いる神戸空港
──讃岐田訓
神戸空港は来年度末、つまり一年数ヶ月後に開港予定である。何が何でも、飛行機を飛ばすらしいが、危険きわまる、まさに曲芸飛行でしのがざるを得ない。
大阪湾は地形的に最悪の空域である。南北が約一五マイル(約二八q)、東西が約三〇マイル(約五六q)の空間である。出発速度を約二五〇ノット(約四五〇q/h)で飛行すると、それぞれ約三分、および六分で通過してしまう。
しかも、周辺の三方を六甲山系、生駒・葛城山系、紀伊山系という山岳障害物で囲まれている。その上、神戸空港を発着する経路上には明石海峡大橋(高さ二八三m、約八六五フィート)がある。この狭い空域で航空機は三次元で移動するので、空域の設定は水平間隔だけでなく、上下にも間隔を設定する必要がある。
ちなみに、計器飛行での航空機間の高度差は一〇〇〇フィート(約三〇〇m)、地上の障害物からは二〇〇〇フィート(約六〇〇m)の垂直間隔を必要としている。このような地形的な悪条件と飛行条件の中で、三空港の航空機がひしめく状況になる。この事態に神戸市の言葉がふるっている。『電車に乗っていても、混んでくれば座席をつめるなど、工夫は誰でもする』。
六甲おろしで乱気流も発生する。この現象はことに冬期に、山岳の風下で気流が波打って流れることから起こるので、神戸空港の周辺にも強い乱気流が発生するのである。横風や追い風も瞬間的に発生する。飛行にとって、もっとも危険な気象状態となる。
また東風時には、東に向かって離陸し、直後に高度を一〇〇〇フィートで維持しつつ、一八〇度旋回して、明石海峡大橋を越えて行かねばならない。関空に着陸する航空機は、舞子ポイント(明石海峡上空付近)を高度四〇〇〇フィート、摩耶ポイント(神戸空港南付近)を三〇〇〇フィートで通過し、西宮沖を二〇〇〇フィートまで下降するので、神戸空港を東向きに離陸する航空機は、六甲アイランド南沖を一〇〇〇フィートの高度を維持しつつ、約二〇qの距離を水平飛行して、一八〇度旋回しなければならない。
離陸直後にこの低い高度で水平飛行に移るには、最大出力で離陸した直後にフラップを下げて推力を減衰させ、飛行姿勢を下方向へ向ける瞬時の操作が必要である。これはパイロットにとって、決死の操作である。その後、急上昇して明石海峡大橋上空に向かい、二〇〇〇フィートに頭を押さえられた状態で通過してゆくことになる。眼下の障害物と一〇〇〇フィートの間隔しかとれない。
航空安全推進連絡会議(略称、航空安全会議)も、これらの危険性に対して、たび重なる警告を発している。この団体は、官・民のパイロットや管制官を含めた航空労働者、六四組合、約二万二〇〇〇名で組織され、これまで三十数年にわたって、民間航空の安全確保と航空事故の絶滅を最大の課題にして運動を進めてきた。